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国立新美術館の「ビュールレ・コレクション」に行ってきたよ

印象派好きとしては見逃せない.
そう思いまして,国立新美術館で催されている「ビュールレ・コレクション日本展示」に行ってきました.
これがそのチケット.


至上の印象派展 ビュールレ・コレクション(国立新美術館)
ビュールレ・コレクション(wikipedia)

感想としては,大変満足です.

「美術作品の良さがわからない」という人もいますよね.
こういう仕事をしているとそんなことを言う学生も時々いるのですが,その折に話すのが「美術作品をしっかり何度も見ること」と「本物をちゃんと見ること」を勧めています.
それで「つまらない」と思うのであれば,それはそれで美術に合わない人なのですから仕方ありません.

何度か野球を観戦してみて,しかも結構本気で選手や試合分析をしてみて,それでも「面白くない」と思う人は,野球というスポーツが合わなかっただけのこと.
無理して観戦しても幸せにはなりません.それと一緒です.
ちなみに,私は元野球選手ですが野球観戦は嫌いです.誘われて見に行くことはありますが,自分から進んで行くことはありません.プレーは好きなんですけどね.
美術にしても,見るのは嫌いだけど,描いたり彫ったりするのは楽しいという人だってたくさんいるでしょう.そんなものです.

「本物をちゃんと見る」ということについてですが,今は美術作品をネットで見れるようになったとは言え,やっぱり実物を肉眼で見るのとは大きく違います.
文書の推敲にしても,PCモニタで確認するのと,紙に印刷されたものを確認するのとでは,誤字脱字の発見とか文章スタイルの直しが違ってきますよね.あれと類似しています.
作者は,その作品が完成した時のサイズや見られ方などを全て考慮して仕上げています.PCモニタではそれが再現できません.
だから実物を見なければ,美術作品を楽しむことはできないんです.
私が一番好きな作品に,ゴッホの「花咲くアーモンドの木の枝」という絵があるんですけど,これがまた写真とかウェブ画面ではクソみたいな絵に見えるんですね.
なお,「花咲くアーモンド」ってのは,この絵です↓
フィンセント・ファン・ゴッホ「花咲くアーモンドの木の枝」(wikipediaより)
ご覧の通りのつまらない絵ですが,実物を見ると感動します.そりゃもう目が釘付けになりますよ.ゴッホ美術館の数ある作品の中でも,「マジこれやべぇ!」ってビビったものの一つです.
お金があるなら数十億出しても手に入れたい.そんな人の気持ちも分かります.

そういう意味では,高度な贋作であれば,本物と同じ感動が得られるとも言えます.
私としては,高度な贋作は「偽物」と言えども美術作品としての価値は高いと考えています.こういうのは贋作というかレプリカというのでしょうけど.

「花咲くアーモンド」に感動した私は,その土産物売り場で実物大写真を見つけたのですが,やっぱりクソみたいな絵に見えるのでとても買う気にはなれず.印刷・コピーは実物の絵とは違います.
本物と同じ感動をくれる「花咲くアーモンド」の忠実なレプリカがあれば,ぜひとも手に入れたいですね.100万までなら出す.

話をビュールレ・コレクションに戻します.
今回は平日に行ったのですけど,それでもたくさんの人が集っていました.休日はもっと凄いんでしょうね.平日で正解です.
そうじゃなきゃ作品の前でまともに時間が過ごせないでしょう.流れ作業のような鑑賞になってしまうのは容易に想像できます.

このイベントのポスターや上掲したチケットに載っている目玉展示が,ルノワールの「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢」なんですけど,目玉に設定されてることもあって,その作品の前は特にごった返しちゃって落ち着いて見れたもんじゃない.
空いてるタイミングを見計らって見るに限ります.
なお,実際に見た感想ですが,やっぱりあの髪の毛のルノワールらしい表現はハンパないですね.これも写真やモニターでは全然分からないところ.実物の鑑賞を強くオススメします.

出口の前には,これまた目玉展示であるモネの「睡蓮」.日本初公開なんですって.
ここが「写真撮影OK」になってるもんだから,皆さん携帯・スマホを取り出してこれでもかと写真撮りまくってます.
モネの絵を前に,家族揃って記念撮影している人がいます.「すみません.撮らせてください」と周りにペコペコ頭を下げてパシャリ.なかなか微笑ましいではありませんか.
それはまだいい.バカじゃないかと思うのは,「睡蓮」だけを必死になって撮ろうとしている他の大多数です.
巨大な絵の全景を正面から収めようと,鑑賞している私の耳元とか頭頂部とかでスマホを位置取りパシャリ(ピロロ〜ンとかも).さらには腰の前までかがみ込んできて撮影を頑張る人もいます.いい加減にしろ.落ち着いて見れないじゃないか.
上述してきたように,写真ではその絵の良さが全くわからないんです.だから無駄.
そもそも,「睡蓮」だけを写真で見るならウェブでダウンロードしてこれるじゃないですか.
ほら,こんな感じで↓
クロード・モネ「睡蓮」(国立新美術館:http://www.buehrle2018.jp/works)
自分で撮影するより,よっぽどキレイで高画質に手に入れられます.
ですから,どうせ撮るなら「家族写真」として撮影する方がなんぼか価値がありますよ.

ちなみに,この展示会で私が最も気に入ったのはピサロの「ルーヴシエンヌの雪道」です.
カミーユ・ピサロ「ルーヴシエンヌの雪道」(国立新美術館:http://www.buehrle2018.jp/works)
私は人物画よりも風景画や静物画が好きでして,ゴッホの「花咲くアーモンド」もそうですけど,こういう単調な中での微妙な色使いから生まれる鮮やかさに魅力を感じます.
あと,気に入る基準は「部屋に飾りたいか?」という点ですかね.

ゴールデンウィークになると大混雑になる恐れがありますので,空いている時に行くことをオススメします.