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今年のおさらい

今年最後の記事ですから,2018年のおさらいをしてみたいと思います. 個人的には充実した1年でした. 来年に向けた展望を考える上で重要な期間になりましたし,だからこそ来年は私にとって分水嶺になるでしょう. いろいろ考えていることはありますが,そういうのはまた追々話していこうと思います. 一番印象に残ったニュースは,やっぱり米朝首脳会談ですかね. このニュースに限らず,今年は私にとって本格的に政治・国際関係のニュースから興味がなくなった年でもありました. 身近なところでは,このブログでも教育・大学に関する記事をずっと書き続けているんですけど,3年くらい前から「もうダメだ」と諦めていたところです. ■ 大学教育を諦める 実際には5年前からです. その時はまだ■ こんなホームページの大学は危ない とか■ 「教職員用」危ない大学とはこんなところだ などと遊んでいましたが,もう諦めの境地にありました. それ言い出したら,国内のニュースについても諦めていました.そんな記事を同じような時期から書いていました. ■ 沖縄基地問題を諦める ■ ウヨクの知能を諦める ■ 東京を諦める ■ オリンピック・レガシーを諦める ■ 保育所問題を諦める ■ 日本ブランドを諦める 結局のところは国外問題も,海外の政治も同じ状況なのだなと,そう考えるに至ったのが今年です. 米朝首脳会談はその象徴と言えるでしょう. 参考までに,その時のブログ記事がこちらです↓ ■ 歴史的ということらしい米朝首脳会談 ■ 歴史的ということらしい米朝首脳会談(の補足) 朝鮮半島で戦争が始まるかもしれない. というか,「アメリカが北朝鮮を潰してくれるかもしれない」という期待を日本のタカ派やウヨクは論じていました. アメリカが北朝鮮と戦争をしてもなんの特も無いのに. 下手に北朝鮮に手を出して,中国やロシアと軍事的にこじれる方がよっぽど嫌でしょう. 現状,朝鮮半島で大規模な戦争なんて起きようがないんです. むしろ,どうやって北朝鮮を懐柔するかが隣国である日本をはじめとする中国,ロシア,韓国のミッションになっているはずです. 上記の記事でも書きましたが,日本と韓国は北朝鮮との戦争に耐えられません. 最終的に「勝利」することはできるかもしれないけど,その勝利を

いわゆる「レーダー照射事件」についての率直な解釈

「お前は平和ボケしている」という批判を承知で,率直な感想を述べてみたい. 先日の「韓国海軍レーダー照射事件」です. 日本側からの具体的な反応とか説明が出てから書こうと思っていた記事ですが,それから1週間,たいした反応もなかったので書けず仕舞いでした. ですが,ここにきて防衛省のホームページでレーダー照射時の映像が公開されました. ■ 韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について (防衛省2018.12.28) 本件を伝えるニュースはこんな感じでした. ■ 韓国艦レーダー照射は2回、数分間「意図的な事案」 (産経新聞 2018.12.22) 韓国海軍駆逐艦が石川県・能登半島沖で海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射した問題で、照射が2回にわたって行われていたことが22日、分かった。複数の政府関係者が明らかにした。防衛省は同日、レーダー照射に関し「極めて遺憾であり、韓国側に再発防止を強く求める」との声明を改めて発表した。 以前も中国軍とそんなことがありましたね. ■ 中国海軍レーダー照射事件 (wikipedia) 実のところ,こういう事件について私はそんなに重要視していません. 以前の中国軍との時も,記事にしようか迷いましたが,結局大した事ではないと思ってスルーした事件です. これって,その場の反撃も,その後の政治的な報復もできない立場に置かれている現在の日本が,韓国におちょくられただけでしょう. むしろ,どうして日本政府やマスコミはこんなに本件を騒ぎ立てるのか? 騒ぎ立てない方がおかしいって? いえ,この事件は水面下で片付ける性質のものじゃないのですか? 軍隊同士の索敵調査の話だし. しかし,いわゆるウヨク的な発言が日本のネット上で湧き上がりました. ウヨクみたいなメディアでも大々的に報じました. ■ 「米軍なら即座に撃沈」レーダー照射、日韓関係さらに冷え込み (産経新聞 2018.12.21) 火器管制用レーダーは「FCレーダー」とも呼ばれ、ミサイルや火砲を発射する際、目標の距離や針路、速力、高度などを正確に捕捉し自動追尾する「ロックオン」に用いる。発射ボタンを押せば攻撃可能な状態だ。防衛省幹部は「米軍なら敵対行為とみなし即座に撃沈させてもおかしくない」と語る。 あのさぁ,「米軍な

イニエスタに着ぐるみを着せる大学広報

昨日,よく知る大学の先生と夜中まで男2人でサシ飲みしてたんです. 最近は「サシ飲み」をすると言っても対面(オフライン)ではなく,スカイプとかフェイスタイムを使っての「オンライン飲み会」ができる時代です. この先生とは,こういうオンライン飲み会をもう6年くらいやってます.便利な世の中になったものですね. 話題は「大学広報」になりました. その先生の大学のホームページがヤバイことになっているとのこと. さて,このブログの常連さんなら覚えているかもしれませんが,もう6年以上前の記事になってしまいましたけど, ■ こんなホームページの大学は危ない というのを書いたことがあります. 2012年時点で,「こんなホームページにしている大学は危ないぞ」という警鐘を面白おかしくフザケて書いたんですが,思いのほか世間のウケが良く,閲覧数があれよあれよと何千何万と増えたのも懐かしいです. そこに書いていたことの一部は,2018年現在の大学ホームページにおいては「普通」になってきているものもありますが,その多くはやっぱり大学の「危なさ」と相関性がみられます. そして,件の先生の大学ホームページが,まさにこれにバンバン該当するようなっているとのこと. 実際,私も確認してみたのですが,トップページが表示された瞬間に爆笑するほど「香ばしい大学ホームページ」になっているんです. 思わず「あっぱれ!」って付けたくなるくらい,典型的な危ない大学のHP. 前回の映画の記事と本質的には類似するんですけど,逆の意味で絶妙な構成によって「それじゃない」を作り出している感じ. これを私達は,「例えて言うなら,イニエスタに着ぐるみを着せてるようなもの」とか,「イニエスタにティッシュ配りさせてるようなもの」と評しました. つまり,こういうこと. 普通にフィールドでのびのびプレーさせてれば,それだけで『広告』になってくれるのに,なぜか低レベルな広報戦略に巻き込んでしまい,本人じゃなくてもいいティッシュ配りさせて無駄に「イニエスタにティッシュ配りさせてる俺たちって凄くね」というアピールや,せっかくの『イニエスタ』なのにそれと分からなくなる着ぐるみを着せてしまい,一生懸命に広報させることによって『規定通りに頑張ってるぞ』的なものを無意味に演出している状態. を指します. 実

体育学的映画論「銀魂(実写版)」

主観的なものだし,こういう作品を高評価する人もいるし,結局のところ本人が楽しめればOKだというものなのですけど. やっぱり辛口の記事になってしまうのをご了承ください. かつてもハリウッド版「ドラゴンボール」とか,「デスノート Light up the new world」に辛口評価をしている私ですが,なにも「マンガやアニメの実写化はダメだ」といった考え方をしているわけではありません. ■ 井戸端スポーツ会議 part6「スポーツとニーチェとドラゴンボール」 ■ 体育学的映画論「デスノート Light up the new world」 そうじゃなくて,作品の持ち味や良さを消してしまう,もしくは逆撫でするような設定や脚本,演出が,これら実写化において発生することの危険性を問うているのです. 例えば,世間の評価は低いですが,私の評価が高いアニメの実写化として「Next Generationパトレイバー」があったりします. ■ 大学院進学を考える人へ「実写版・パトレイバー」 (けど,そのNext Generationパトレイバーも,完結編である「首都決戦」の出来は悪いと思う) 例のドラゴンボールにしても,この銀魂にしても,どうしてこうなっちゃうんでしょうかね. 同様のコケ方をしたものとして,実写版「進撃の巨人」というのもあります.あまりの出来に,これまでずっと触れずにいましたが,あれも酷かった. 共通するのは,中途半端な原作再現です. でも,マンガやアニメというのは実写では表現できないことをやっているのだから,実写にするにあたっては「実写」であることの持ち味を出さなければいけません. でなければ,映像技術に自信がある学芸会になってしまう. このあたりのことは,日本のゾンビ映画「アイアムアヒーロー」でも見られたことですので,■ 体育学的映画論「カメラを止めるな!」 でも少し触れました. もちろん,この「原作再現」は金をかければなんとかなる例もあります.ロード・オブ・ザ・リングとか,マトリックスとか. シンプルなストーリー,退屈な展開を,圧倒的な映像で乗り切るテクノロジーが求められます. でも,そこまでの予算と技術がないのなら,実写であることにこだわるべきです. マンガやアニメは実写と比べて「身体性」が弱くなります. 例えば

高性能なはずのトラックボールMX ERGOがスクロールできない件

泣きそうになっていました. 昨年の ■ 新型トラックボールの使い心地 の記事でもご紹介した,ロジクールのMX ERGOがスクロールできんのです. これじゃ30年前のパソコンデバイスに逆戻りじゃねぇかと. 仕方なくマックのMagicトラックパッドでやっていたのですが,思い当たるフシが1つ. 昨日なんとなしに現れた 「ロジクール・オプションズ(Logicool Options)のアップデート」 というものを実行したからです. このブログの更新頻度がだだ下がりではありますが,それは仕事で別のホームページを作っていたり,Youtubeの動画を作成したりと,結構時間を削られていたから. その時に起きた今回の「MX ERGOがスクロールできない事件」は,作業効率がめちゃくちゃ下がる大問題でした. 結論から言えば,ロジクール・オプションズのアンインストールで直ります. マック画面の上部にある「移動」から「ユーティリティ」に入り, 「Logicool Optionsアンインストーラ」を起動 させます. Logicoolのサイトには「以前のバージョン」というものがあるので,これをダウンロードしてインストールすれば,普通に使えます. すぐに「Logicool Optionsがアップデートできます」みたいな通知が来ますが,これは無視するのがMX ERGOユーザーに必要な選択です. 上記の症状は昨年12月以降に発生していたものですが, 2019年6月6日現在,またスクロールが動かなくなりました その直し方としては, いったん「 「ロジクール・オプションズ(Logicool Options)」の アップデートを行い,再度,ロジクール・オプションズのアンインストールを行う. というものです. 手順としては簡単ですが,なんだかんだ面倒ですね.

興味のある話題ってなんでしょうか

やばい. ブログに全然手がつかなくなってきました. 「やらなきゃいけない事」があるのだから幸せという人もいましょうが,私はどっちかって言うとこれを幸せとは思いません. のんびりボチボチ生きていくことが人生の目的です. 仕事を仕事と思わずに生きる. それができなきゃその環境を離脱する,を生きる指針にしています. ところで先日,非常勤講師として一緒に仕事している方々と食事会を開いたのですが,そこで言われたのが「○○(私)先生が興味のある話題が分からない」というもの. これまでにも,気を遣って私の興味がありそうな話題を振ってくれていたのでしょうか? いつも昼食を同じ「教員控室」で摂るものですから,そこでこの方々と雑談になるんですけど,いろいろ餌を変えて釣り糸を投げ込むも,ぜんぜん食いつかないから不安になっていたのですね. たしかに,私は自分から話題を振らないし,そこで話されている話題に興味があっても「会話」するのが面倒だからスルーしていることもある. でも,概ねそこで話されている話題に興味がないというのが実情です. 芸能関係,男女関係,政局,グルメトーク,ファッション,最近の若者(学生)論,組織論などが展開されることが多いのですけど,どれも正面から向き合うのがどっちかって言うと嫌いな話題ばかりです. 実際,好奇心と嗜好のベクトルが真逆に近いんだろうな. 具体的に言えば,この方々は「課長島耕作」っていうマンガを愛読されていて,それを人生の指針にしているし話題にすることも多いんですけど,上述しましたように,私は違うものを人生の指針にしています. 話題が合うほうが不思議ですよね. 芸能関係なんてのは,全くと言っていいほど不案内です. どっかの誰かが不倫したとか,どこそこのお笑い芸人がケンカしてるとか,はっきり言ってどうでもいい. 芸能人というのはそういうことをネタにして生きている人たちです. 不倫もケンカも,それが仕事みたいなものでしょう. そういうのに,いわゆる「マジレス」するのは野暮ってものでしょう. 政治や政局の話題なんて,何を根拠や哲学にして言ってるのかさっぱり分からないし,笑点の三遊亭円楽さんの如く,「庶民のことを考えてないのが日本の政治家」みたいな感じで雑にまとめようとする. いえ,別に円楽さんを批判しているわけ

東京オリンピックのボランティアの件

ご無沙汰しております.お久しぶりです. ここ1ヶ月ほど,仕事として別のウェブサイト制作・管理に時間を割いていまして,自分のブログまで気が回りませんでした. これまでにもネタはいろいろあったのですけど放置. またちょっとずつ書いていきたいと思います. さて,本日はこんなニュースがありました. ■ 五輪ボランティアに応募8万人超 44%が外国人 (ライブドアニュース 2018.11.21) 2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会は21日、大会ボランティアの応募手続きを完了した人が20日午前9時時点で目標の8万人を超え、8万1035人となったと発表した。日本国籍以外の人の割合が44%に上った。インターネットでの受け付けは12月21日午後5時に締め切る。 組織委によると、過去大会では実際に採用されたボランティアのうち外国人は10%以下のことが多いという。武藤敏郎事務総長は「予想以上」とし「日本語が不自由だと、十分に活動できるかというのは現実問題としてあると思う」と述べ、活動分野などで配慮が必要との考えを示した。 日経新聞では, ■ 東京五輪・パラの大会ボランティア、目標の8万人達成 (日本経済新聞 2018.11.21) 2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は21日、国内外から募った大会ボランティアの応募者が20日午前9時時点で8万1035人に上り、目標の8万人を達成したと発表した。4割超が外国籍で、東京大会は支え手も国際色豊かになりそうだ。 と書いているわけですが,物は言いようです. ということは,日本人ボランティアは4.5万人ということ? やっぱり応募者は少なかったんですね. 12月21日まで延長するみたいです. 読売新聞にはもう少し詳しく書かれていました. ■ 東京五輪ボランティア応募、目標の8万人を突破 (読売新聞 2018.11.21) 一方、観光や交通案内を担う「都市ボランティア」を募集している東京都は、2万人の募集枠に対し、応募者が21日午前10時現在で1万5180人にとどまっていることを明らかにした。約4800人足りない状況で、都は12月5日としていた募集締め切りを同21日まで延長した。都は「説明会などを通じてPRをさらに強化したい」としている。 記事中には「2万人の募集枠」ということですが

体育学的映画論「カメラを止めるな!」

ゾンビにまつわる映画が,ここ20年くらい世界中でブームになっています. 20年以上ともなると,もはや “ブーム” と言うより “ジャンル” です. 今となっては,「アクション」「ロマンス」「ホラー」「ミステリー」「コメディ」などというカテゴリの一つとして,「ゾンビ」が入っている状況です. 一方,日本では「ゾンビ」というモンスターに親しみがないからか,あまりゾンビ系の映像作品は製作されていません. 最近になって,本格(?)ゾンビ映画である「 アイアムアヒーロー 」が出てきたくらい. タイトルに使わせてもらった「 カメラを止めるな! 」は,ゾンビ映画としては変化球.実際のところゾンビは出てこないので「ゾンビ映画」ではなく「コメディ映画」ですね. でも,こっちの方が映画としての出来はいいと思います.今年の映画界最大のヒット映画と言えます. 対する「アイアムアヒーロー」は賛否両論のようですけど,私としては「?」ってなる作品でした.やや退屈かな. 漫画が原作だからかもしれませんが,行動や判断がいかにも「漫画」なんですよね.ここんとこは実写映画らしく,実写に耐える脚本や演出にしてほしかったところ. それに,クライマックスでゾンビを倒し尽くした大泉洋が,後光が指すなかカッコよく立って,それに有村架純が「ヒーロー・・・」と呟くという,造り手としてはやりたくなるけど絶対にやってはいけない稚拙さ満載の致命的シーンが入っています. 面白い映画だとは思いますが,そのあたりが残念. ただ,アイアムアヒーローは日本では唯一と言っていいゾンビ映画なだけに,その本質的な部分をシンプルに描いてくれています. それは,「ヒトを躊躇なく撃ち殺せる」ことと,「ゾンビの正体」です. 近年のブームの発端は,ゾンビ映画の元祖「 ナイト・オブ・ザ・リビングデッド (1968年)」の監督であるジョージ・A・ロメロ氏が言うには「テレビゲームの影響」とのことです. ■ なぜゾンビはゲームで大流行してるの? ガチゲーマーの若手批評家がゾンビゲーム史と共に徹底解説 (電ファミニコゲーマー  2017.10.2) 私たちが中学・高校の頃(90年代中頃)に登場したテレビゲームに,「バイオハザード」というのがあるんです. シューティングゲーム界に一大ブームを巻き起こしたのも,今となっては懐

体育学的映画論「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」

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原題が 『Darkest hour』 ということで,おそらく「夜明け前が一番暗い(The darkest hour is just before the dawn)」を指しているのだと思われます. ヒトラーに支配されてゆくヨーロッパにあって,その反撃の芽となるチャーチル首相就任にまつわる話.ヒトラーの脅威がヨーロッパ全土を覆っていた暗黒の時代を描いています. ゆえに,「夜明け前」の時間である「Darkest hour」なのでしょう. 政局によってしかたなく首相に就任したチャーチルが,ヒトラーと対決姿勢を示すまでの話なので,“ヒトラーから世界を救うお話” ではありません.イギリス人以外の,それも日本人が観るには,かなり地味なものとなっています. ただ,「ヒトラーから世界を救った男」が,どういう経緯で誕生したのか興味深く撮られています.私はこういう作品は嫌いじゃありません. あと,主演がなんでも演じられるゲイリー・オールドマンなのですが,体型や容姿がぜんぜん違うチャーチルを演じるために特殊メイクをして出演しています.パッと見ではゲイリー・オールドマンには見えません. この特殊メイクが非常にハイレベルで,この手の見せ方によくある違和感や無理矢理感が全く無いんです.辻一弘という日本人メイクアップアーティストが担当しており,メイクアップ&ヘアスタイリング部門でアカデミー賞も受賞しているとのことです. 今年の3月に日本公開された作品でした.興味はあったんですけど,足を運ぶのが面倒だったので映画館では見ず,さっき動画配信サイトで見ました. 最近はヒトラーとかナチスにまつわる映画やドラマが多いですね. この現象を解説したサイトがいくつかあります. ■ ヒトラー&ナチス映画が最近増えているのはなぜ? 「欅坂46」も巻き込んだナチズムの危険な魅力 (エキサイトニュース 2017.7.12) ■ 日本で“ナチスもの”映画がたくさん公開されるのはなぜ? (dmenu映画 2017.11.30) ■ ナチス関連映画はなぜ増えた? 公開ラッシュに透けて見えるもの (AERA 2018.1.9) まとめると, 1.ヒトラーやナチスを扱った映画はクオリティが高い(適当には作れないから) 2.歴史的に時間が経過したことから,突っ込んだテーマのものを作り

体育学的映画論「イコライザー2」

デンゼル・ワシントンは私が好きな俳優の一人です. 彼の作品にハズレはありません. 前作『イコライザー』の続編である今作. なんか嫌な予感がするけど,デンゼル・ワシントンが出る作品だから大丈夫だろうと期待して観てきました. さて,その感想ですが,ハズレではないけど「“2”は期待を裏切ってくる」の法則が成り立っていたことはたしかです. ちょっぴり残念. 【以下,映画の内容を類推することができるものになっているので,ご注意ください】 前作の「イコライザー」は,さしずめアメリカ版「必殺仕事人」. アクションあり,人情ありの,スタイリッシュな勧善懲悪を気分良く見れる映画になっていました. 男たるもの,マッコールさんのように生きるべき.そう思わせてくれたものです. 極々普通に見えるホームセンターの店員が,実は凄腕の元CIAエージェント. 彼はそのスキルを活用して,一般人がやろうと思っても出来ない暴力的な人助けをする,というものでした. 今作も基本的にはこれを踏襲しています. 世の中は悪党がいっぱいのさばっている. けど,それに対するカウンターも存在する. ロバート・マッコールは,その悪党に対する「イコライザー(平衡装置)」なのです. 前作「イコライザー」では,そのイコライザーっぷりを存分に発揮したロバート・マッコールでしたが,今作ではイコライザーを通り過ぎて「アベンジャー」になっていました. そういえば,アベンジャーって名前の集団が既に別の映画にいますよね. つまり,この映画の魅力であるコンセプトや設定から外れてしまったパターンです. これと同じパターンのシリーズ映画に,ブルース・ウィリス主演の『ダイ・ハード』があります. 「ダイ・ハード」は,決して凄腕ではないオッサン刑事が,たまたま居合わせたテロ事件に巻き込まれ,多勢に無勢の中で勝機を探るという状況を楽しむものです. ところが,「2」以降になるとシュワちゃんやランボーに勝るとも劣らない派手な戦闘を展開してくれます.普通のオッサンがあんなことできんだろ. 「3」では,共演したサミュエル・L・ジャクソンがその「居合わせた普通のオッサンがテロ事件に巻き込まれる」という役回りを演じてくれましたが,「4」とか「5(ラスト・デイ)」ではダイ・ハードの名前を冠したワンマンアーミー

沖縄の米軍基地問題について2018

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台風すごいですね. 台風と一緒にこのニュースが本土に届きました. ■ 沖縄知事に玉城氏初当選 政権支援の候補破る (朝日新聞 2018.9.30) 沖縄県知事選が30日投開票され、前自由党衆院議員の玉城(たまき)デニー氏(58)が、前宜野湾市長の佐喜真(さきま)淳(あつし)氏(54)=自民、公明、維新、希望推薦=ら3氏を破り、初当選した。最大の争点だった米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画に、玉城氏は「反対」を主張してきた。県民は翁長雄志(たけし)知事が当選した前回知事選に続いて、辺野古移設にノーを突きつけた形となった。 過去記事でも米軍基地問題について取り上げたことがありますけど,なんか最近の一部の日本人には, 「沖縄は米軍基地のおかげで成り立っているのに,そんな立場で基地反対とは生意気な!」 といった雰囲気があるんですよね. 案の定,このニュースに対するネットの反応には「沖縄は終わった」「中国に侵略される」「沖縄県民は愚かな選択をした」といったものが見られます. ■ニコニコニュース: 沖縄知事選:玉城デニー氏が初当選 辺野古反対派に追い風 (2018.9.30) ■ヤフー・ニュース: <沖縄知事選>玉城デニー氏が初当選 辺野古反対派に追い風 (2018.9.30) ところがこういう意見,なぜか政治的に保守・右派の立場を標榜する人に多いし,しかも,それが結構大きな声になっていて. さらには,この趣旨の意見が沖縄県民の中にも散見されるもんですから,余計に勢いづいてたりします. いやね,以前にも書きましたが,「沖縄は米軍基地があるから経済発展している」っていう意見があってもいいんですけど,それをリベラル・左派とか反国家主義的な人が言うんだったら分かるんですよ. 他国の軍隊を自分とこの土地に闊歩させて,そこで犯罪が発生しても地位協定で警察が介入できなくても,それで安全が保たれてるならいいじゃないか,経済発展してるならいいじゃなかという主張. これって完全に家畜・奴隷の発想じゃないですか. ところが,自主独立とか民族自決を大事にしているであろうはずの,保守・右派を自称する人たちがこれを言ってるんですよ. 不思議ですね. まあ,我々ホモ・サピエンスはそもそも「穀

Deus ex machinaな未来(4)

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世間ではいろいろニュースがありますが,たいして面白くないし楽しくもないので,私の好奇心に従って記事にしたいと思います. そんなわけで, ■ Deus ex machinaな未来(1) ■ Deus ex machinaな未来(2) ■ Deus ex machinaな未来(3) の続きです. 人類は将来,サイボーグ化することで高い知能と感情コントロールを身に着け,「神」を必要としなくなる時代が到来するのではないか? ユヴァル・ノア・ハラリ氏は,これは人間が神になることと同義ではないかと考え,そうやって アップグレードされたホモ・サピエンスのことを「ホモ・デウス」 と呼称しました. その著書『ホモ・デウス』が話題となっています.     前回の記事では,仮に人類全てがホモ・デウスに進化する可能性があるとしても,その黎明期や過渡期においては, 「ホモ・デウス vs. ホモ・サピエンス」 という状況が現れることは必然であり,そこには差別問題や主従関係が発生するのではないかという話でした. さながら,ホモ・デウスのペットとしてホモ・サピエンスが存在するような時代が到来するのかもしれないわけです. しかし,ホモ・サピエンスがホモ・デウスにペットとして飼われたり,悪く言えば家畜化された状態になったとしても,それはホモ・サピエンス自身にとって不幸なことではないと思います. そもそも,ホモ・サピエンスをペットや家畜だとする認識は,ホモ・デウス側の見方です. 今にしたって,ホモ・サピエンスはイヌをペットにしていますが,飼われているイヌは自分を「ホモ・サピエンスのペットだ」とは認識していないでしょう. それなりに頼りがいのあるリーダーだとイヌ側は見ているはずです. イヌにしてみれば,ホモ・サピエンスは姿形が自分(イヌ)とは違えど,いろいろ摩訶不思議な能力を発揮して食べ物や快楽を与えてくれる便利なリーダーだと捉えているかもしれません. そして,おそらくはイヌはイヌなりに幸せな生活が送れて満足しているものと思います. これには反論もあるでしょう. ペット(家畜)になったイヌは,やはりイヌらしい生き方ができていないのだから,不満足で不幸な生き方をしているのだ,と. その通りではあるのですが・・・. しかし,これは壮大

Deus ex machinaな未来(3)

■ Deus ex machinaな未来(1) ■ Deus ex machinaな未来(2) の続きです. ユヴァル・ノア・ハラリ氏が,その著書 『ホモ・デウス』 が描いている,「このままの調子で行った先にある」我々人類の未来を紹介するシリーズです. 「このままの調子で行った先にある」 と括弧付けをしたのは,ハラリ氏も本書で述べているように,我々人類がどこかで「いや,こういう未来はダメでしょ」と考えて,進路変更する可能性もあるということ. 前回記事で解説したような,「科学革命」を推し進めていった先にある「データ至上主義」では,どうやら人類にメリットがないぞ,幸せになれないかも,と踏んだら『ホモ・デウス』は誕生しないのです. さて,今回の記事ではもっと具体的に,ハラリ氏が描くホモ・デウスが誕生した未来をイメージしてみます. ざっとおさらいしておくと,ハラリ氏の言う「ホモ・デウス」とは,私たちホモ・サピエンスが科学技術を駆使し,データ処理能力や身体機能,精神・感情などを高度にコントロールできるよう “アップグレード” されたホモ・サピエンスのことを指します.  さしずめ,SF作品に出てくる「強化人間」などのサイボーグみたいなものです. まさに,Deus ex machina(機械仕掛けの神)なんですね. 最初のうちは,めっちゃ高性能なスマホとかグーグルグラスみたいなものから始まるでしょうが(というか,既に現在のスマホは「ホモ・デウス」へのスタートラインと言える),そのうちこういったガジェットを体内に埋め込んだり,神経に直接働きかけて認識させるようになると考えられています. ここらへんは,ウィリアム・ギブスンの 「ニューロマンサー」 とか,士郎正宗の 「攻殻機動隊」 なんかでイメージしやすいかと思います. ただ,ここで重要なのは,ハラリ氏がそれを「強化人間」や「超人」ではなく,「ホモ・デウス(人神)」と称するのは,高度なデータ処理と,感情や精神をコントロールできるようになったホモ・サピエンスは,「神」を必要としなくなるだろう. そしてそれは, ホモ・サピエンスが「神」へとアップグレードされる ことを意味すると考えているからです. しかしハラリ氏は,全てのホモ・サピエンスがホモ・デウスへとアップグレードするわけでは

Deus ex machinaな未来(2)

■ Deus ex machinaな未来(1) の続きです. 先日出版された 『ホモ・デウス』 がとても面白かったので,著者であるユヴァル・ノア・ハラリ氏の前著である 『サピエンス全史』 と一緒に紹介してみようという記事です. 『サピエンス全史』は,我々「ホモ・サピエンス(ホモ・サピエンス・サピエンス)」という何の取り柄もない人類の一種族が,その他の人類を滅ぼした上に,地球中に繁殖できた理由を最新人類学をもとに解説したものです. まとめると,我々は3つの革命が起きたことにより現在に至っています. 20万年前に誕生したホモ・サピエンスは, 7万年前に「認知革命」 が, 1万2千年前に「農業革命」 が.そして 500年前から「科学革命」 が起こっている状態にあります. 特に,7万年前から始まった「認知革命」が,その他の人類を抑えてホモ・サピエンスだけが生き残り,これだけの文化と文明を築く礎になっています. 今回の『ホモ・デウス』では,絶賛進行中の「科学革命」を経たホモ・サピエンスが,未来においてどこに向かうのか解説しています. 結論から言えば,科学とテクノロジーが発達していった先にあるのは, 人類がホモ・サピエンスであることを捨てて「ホモ・デウス(人神)」へとアップグレードする未来 です. ホモ・サピエンスは,人として生きていく上で必ず生まれる不安や苦しみ,不完全性を補うために「神」を置きましたが,近い将来,科学がその役割を担うようになるだろうという話. ときどきSFもので目にする「強化人間」とか「超人」みたいなものですね. ですが,よくあるSFものの「強化人間」では,「現在の人間のライフスタイル」のままで特定の能力を発達させたものが多いのですが,実際の生命科学・人間科学を進めていった先にあるのは,(無宗教という意味ではなく,本当に)「神」を必要としない人が誕生するという将来像です. つまり,その時人類は科学によって「神」そのものになる.故に「ホモ・デウス」なのです. 前回の記事では,そのひとつの例として,莫大な量のデータを瞬時に記録・分析できるようになることと,その記録・分析装置を体内に埋め込めるようになることで,現在のホモ・サピエンスでは成し得ないデータ処理と認知・判断能力を身

Deus ex machinaな未来(1)

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このブログのタイトルを冠した記事になりましたが,これは最近出版された書籍に啓発されたものです. ユヴァル・ノア・ハラリ著『ホモ・デウス』 がとても面白いのでオススメしておきます. なお,この著者は2年前に世界的ベストセラーとなった 『サピエンス全史』 を出版したことで知られています.       その『サピエンス全史』が非常に面白かったので,昨年から私は,飲み会や授業,世間話の機会に『サピエンス全史』から引っ張ってきたネタを話していました. 体育・スポーツ学という領域からしても,とても興味深い考察ができるからです. 『サピエンス全史』が世界的ベストセラーになったのは,著者のその興味深い考察もさることながら,最新の人類学と人間科学の研究結果を統合して紹介したことにあります. 分かりやすい例を挙げれば,皆さんも以下のような図を見たことがあるかと思いますが・・・, 図:教科書のウソ 人類の進化を表す“あの図”は間違いだったより https://logmi.jp/152154 我々ホモ・サピエンスは,左から右へと徐々に進化して現在に至るという見慣れた図. しかしこれは今の人類学では否定されており ,例えばウィキペディアでは以下のように表現されています. 「人類の進化」wikipediaより このように,ホモ・サピエンスは約20万年前からホモ・エレクトスから枝分かれした人類の一つであり,一時期(約3万年前まで)はネアンデルタール人やホモ・エレクトスが一緒に地球を闊歩していた時代があったと考えられています. なお,上図にはありませんが,ネアンデルタール人やホモ・エレクトス以外にも多種多様な人類がいたことが分かっています. ちなみに,これもウィキペディアに載っていますが, 我々ホモ・サピエンスはネアンデルタール人の遺伝子を少し持っている(混血している)ことが分かっていますし,ジャワ原人や北京原人といった聞き覚えのある種族も,ホモ・エレクトスの一種として現在は分類されているんです. これはちょうど,我々ホモ・サピエンスの中にも白人,黒人,黄色人種といった違いがあることと同じと考えてもらえればいいでしょう. こういう研究結果はここ20年くらいでバンバン出てきたので,一般にはまだ普及していないのです. ■

大阪府警察の皆さん,お疲れ様です

先日から世間を騒がせている大阪府富田林署の脱走事件. ネットではなかなかの勢いで大阪府警察が叩かれまくっているので,ちょっとくらい擁護の声をかけてあげようかと思い筆を執っております. 実は私,大阪府警察には少し御縁がありまして. 過去記事にもしていますので,詳細はそちらをどうぞ. ■ 警察をお世話する ■ 警察のトレーニング それらの記事では,「某地域の警察学校」ということで伏せていましたが,つまりここが大阪府警察学校のことでした.2008年のことです. 別に悪い事してたわけじゃないし,極秘活動じゃないし,隠しておいた方がいいことでもありませんので,この際,明かしておきます. 私達の研究室に依頼に来た方曰く,「大阪府では今年から警察への要望が厳しくなって,いろいろと改革や活動強化をしなければいけなくなった」ということでした. その一環として,警察学校としては訓練プログラムの改善に着手しようと.そのために私達のところに依頼に来たということだったんです. ちなみに,依頼に来たその方は,うちの先生とは高校自体の先輩後輩の関係でした.世間って狭いですね. 察しの良い方はもうお気づきかと思いますが. そうです,2008年と言えば,例の橋下府知事による大阪府改革が始まった時期なんです. この時期,大阪府・橋本府知事は府警に「アレやれコレやれ,でも予算出さない」という,結構けったいな要求をしています. 「とにかく現場の人間が努力せよ」 それが指示内容だったんです. そんなわけで,数年前にもこんな事件が起きていました. ■ 大阪府警、犯罪8万件を計上せず「ワースト返上」とウソ 橋下大阪市長が「おわび」 (ハフポスト 2014.8.1) 大阪府警の全65署が、過去5年間の街頭犯罪などの認知件数計約8万1000件を計上せず、過少報告していた。府警が7月30日に発表した。かつて大阪府知事として「街頭犯罪ワースト1返上」を掲げていた橋下徹大阪市長は31日、定例会見で「当時の府のトップとして府民におわびしないといけない」と陳謝した。 (中略) 過少報告が始まったのは2008年。この年に府知事に就任した橋下氏がワースト1返上に言及したため、府警全体で街頭犯罪抑止が最重要課題になった。 (中略) 橋下市長は31日の会見で、「僕自身がプレッシ

井戸端スポーツ会議 part 56「始まったスポーツ界の内部告発」

ようやくスポーツ界に蔓延るハラスメントが告発されるようになりました. 昨日も,体操競技でそれがありましたね. ■ 宮川、協会からパワハラ受けた 18歳「勇気」の主張 (毎日新聞 2018.8.31) なにか一つの象徴的事件から,一気に火が回る人間社会の典型とも言えるでしょう. これからこういう話はドンドン増えてくるので,その世界にいる私としても気を引き締めておかねばなりません. これは「日本大学アメリカンフットボール事件」に端を発した感のある流れですが,それまでにも日本のスポーツ界は『燃焼剤』を溜め込んでいました. ハラスメントに関する内部告発を促進した直接的な事件といえば,レスリングの伊調馨選手周辺で起きたトラブルでしょう. その後も,選手がコーチを訴える流れは,同じく日本大学のチアリーディング部のトラブルで促進されました. もともと,「日本のスポーツ界」が碌でもない環境であることは,日本人皆が薄々感じていたことです. 学校の部活動をはじめとし,プロ野球,Jリーグ,大相撲といった世界を少し覗いたことがある人からすれば,この世界には表向きの顔と裏の顔があること.さしずめ芸能界とかアイドルと似たような世界だということは気が付きます. マラソンの代表選考がいい加減だったとか,大相撲で暴力事件が起きてもうやむやになるとか,柔道で日常的にセクハラ・強姦が起きていたとか,たくさんの野球選手がやりたい放題してたけど揉み消されていたなどなど. 他にも,結構な数の元有名スポーツ選手が落ちぶれたり,犯罪に手を染めていたというのも定期的に聞く話ですね. もっと言えば,日本のスポーツ界が(おおむね)碌でもない人間の集まりだからこそ,人々は安心して彼らをヨイショして持ち上げることができていたのです. サーカスを見るようなものですね. いえ,これは別にサーカスやスポーツ,芸能界が下賤なものだと差別したいわけではありません. 人間とは,そうやって華々しく映る者の光と影,その盛衰を見て楽しむ文化があるからです.良い悪いの話ではない. もしスポーツ界が碌でもない人間の集まりじゃなかったら,人々は安心して彼らをヨイショなど出来ません.だって,スポーツ界がまともだったら,それを見ている自分が惨めで仕方ないじゃないですか. つまり, 自分よりも劣っている(と見

老兵は死なず

いろいろバタバタしていて,ちょっと時期を逸しましたが「この季節」らしい話題を一つ. お盆といえば「終戦の日」ですので,先の大戦の話です. 今回,お盆で里帰りしていた際に父から祖父のことで話題になったことがありました. 祖父は10年近く前に亡くなったのですけど,その亡くなる直前,病床に際して父を含む何人かにそれまで話していなかった戦争体験を口にする機会があったそうです. それが「ノモンハン事件」. 今年の8月15日は,NHKのテレビ番組で「ノモンハン事件」について取り上げていました. ■ NHKドキュメンタリー「ノモンハン 責任なき戦い」 (NHK) そしたらそこに,私の叔父から父に電話がかかってきて,「親父が派兵されていた所の事をやっている」と言うのです. 父たちにとっては,やっぱり重大な関心事なのですね. 祖父は先の大戦では,陸軍の一兵士として中国大陸と東南アジア地域に派兵されていたそうです. 南方での戦闘については,私も直接祖父から生前にいろいろと聞かされていました. 戦車を潰すことにかけては自信があったそうで,これについては以前このブログで記事にしたこともあります. ■ 即席対戦車爆弾 しかし,北方であるノモンハンの話は初めて. 実際,父たちも祖父がノモンハンに派兵されていたことは,ずっと聞かされておらず,亡くなる直前にようやく聞かされたとのこと. 私も今回,初めて父からこの話をきかされました. ノモンハン事件というのは,満州国とモンゴルの国境線をめぐって起きた,日本とソビエト連邦による軍事衝突です. ■ ノモンハン事件 (wikipedia) そして,日本軍が惨敗し,「北進」を諦めて「南進」へと舵を切り,太平洋戦争へとつながるきっかけとなった重要な出来事でもあります. その戦場の真っ只中にいたのが祖父でした. 祖父がずっとノモンハンの話をしなかったのは,日本軍の戦い方があまりにも杜撰で,地獄としか言えない戦場だったからだそうです. 「とにかく無謀な戦いだった」というのが祖父の評価であり,ここでの戦いは自分の家族に話せるものではないとして,ずっと控えていたとのこと. ノモンハン事件については,特にウヨク系の人たちから「実は,損害は日本軍よりもソ連軍の方が大きかった」という解釈がありま

体育学的映画論「夢」

前回は現在上映中の 『カメラを止めるな!』 の感想を少しだけ述べましたが,詳しく論評するのはネタバレを含むことになるので,もっと後になってからとします. ひとまず,「カメラを止めるな!」は,私は好きな映画です.三谷幸喜の「大空港2013」とか,「ラヂオの時間」みたいな作品は嫌いではありません. 漂う空気も,実写版パトレイバーである「THE NEXT GENERATION パトレイバー」と類似性があったりするので,こっちも好き. いずれも追って論評したいと思います. で,全然作風が違う映画ですが,さっき, 黒澤明『夢』 を見たんです. 私は今,猛烈に感動しています. ■ 夢 (wikipedia) ネットのレビューでは,結構賛否両論なんですね. たしかに,そんな感じの映画ではある. つまらないっちゃ,つまらないもん. 映画って,ある程度のクオリティを超えてくると,あとは好みの問題になってくるように思います. 万人受けする作品,映画通に受ける作品,熱狂的ファンに受ける作品などなど.そこからさらに細分化した後は,個人的嗜好になっていくものです. 今,物凄い人気を博している「カメラを止めるな!」にしたって,たぶん映画通にしてみれば「過去にもこういう作品はあった」とか言うんだろうけど,その時代との融和っていう要素もあると思うんです.いろいろ書きたいことはありますが,これについては,また別の機会に. さて,「夢」ですが,これはその時代の空気との融和とは無関係な作品です. 黒澤明の映画は概ねそういう作品が多いとは思いますけど,これは特にそう. 黒澤明本人が見たとされる夢を映画化したものとされていますが,その映像は鳥肌が立つほど綺麗で,まさに「夢の中の出来事を映像化したらこうなりました」というもの. 8つのエピソードから成るオムニバス形式の映画です. 特に少年時代のエピソードとして出てくる映像は,「小さい子供にとっての自然や伝統慣習の見え方」が見事に現れています. たしかに,私も子供の頃にはこういう夢を見ていた覚えがあります. 例えば「日照り雨」のラストシーンである「花畑と山にかかる虹」の映像は,田舎育ちの私にとっては背筋が凍るような既視感.それは懐かしさと怖ろしさが同時に込み上げてくる複雑な感情. 雨上がりの土と花と緑の匂いも