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体育学的映画論「スターウォーズ/最後のジェダイ」

見てきましたよ,「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」を.
内容が内容だけに,きっと批判レビューが多いものと想定しておりましたが,やっぱり多いようですね.
ただ,私個人的にはかなり高評価な映画でした.
スターウォーズ・シリーズの中では最も好きな作品になったかもしれません.

【以下,ネタバレを含みつ書いていきます】

上映時間も2時間半だし,内容も詰め込みすぎな感が否めないのですが,それでもこれは2つに分けたりせずに1本に収めてよかったと思います.
本作は,これまでのスターウォーズの物語を「そのまま引き継いだ」作品として労作だと私は見ていて,だからこそ長大な上映時間にもなっている.
なので,本作のテーマは「スターウォーズは続くよ,どこまでも」といったところでしょうか.

スターウォーズ・最後のジェダイは過去作の繰り返しです.ようするに,「歴史は繰り返す」ということ.
だからこそ,今作では「ジェダイとは何か?」とか「フォースとは何か?」「光と闇とは何か?」といったことに言及しています.

どうしてそうなるのか? 具体的な項目を立てて考えてみましょう.


(1)ルーク・スカイウォーカーとカイロ・レン
この2人の関係は,完全にオビ=ワン・ケノービとダース・ベイダー(アナキン・スカイウォーカー)の繰り返しです.
アナキンの内部に広がる暗黒面を阻止しようと,オビ=ワンがアナキンと戦ったように,ルークもレンの内部に広がる暗黒面を阻止しようと暗殺しようとしています.
そして,両者は結局のところ失敗したようです.
そして,オビ=ワンがルーク達を逃がすためにベイダーと一騎打ちの後,霊体となって死んだように,ルークもレイ達を逃がすためにレンと一騎打ちの後,霊体となって死にます.
きっと,続編ではレイの前に霊体となって現れて助言することでしょう.
ただ,今作のルークは長髪髭面,座禅組んで浮いてたりと,完全に麻原彰晃でした.
次回作でレイに「カイロ・レンをポアしなさい」などと助言しないことを切に願います.


(2)ルーク・スカイウォーカーとレイ
一方のこの二人の関係は,オビ=ワンとルークですね.
今作でルークがレイに協力しようと決意したきっかけは,R2D2が再生した,レイア姫がオビ=ワンに宛てたメッセージ映像でした.
R2D2はルークに「お前もオビ=ワンから同じようにしてもらっただろ」と言ったに違いありません.
あれは明らかに狙った演出です.


(3)レイの存在
作中,レイは「私はベン(カイロ・レン)とは違う」と言います.
この言葉は同時に,レイの存在が,アナキンの繰り返しであるカイロ・レンとの合わせ鏡であることも象徴しています.
つまり,アナキン・スカイウォーカーに代わる,新たなる「フォースのバランスをとる存在」としてレイが描かれているのです.
実際,レイは半端ないフォースの使い手です.
なんと,自力でフォースを操るすべを体得し,おまけに前作では初めて手にしたライトセーバーでカイロ・レンに勝利しています.
さらにメカニックにとんでもなく強く,初めて乗るファルコンを手足の如く操る姿はまるでニュータイプ.
まさに赤い彗・・,いえ,アナキン・スカイウォーカーの再来です.


(4)カイロ・レンはダース・ベイダーか?
レイがアナキン・スカイウォーカーの再来として描かれているので,言い換えればカイロ・レンはダース・ベイダー,つまりアナキン・スカイウォーカーにはなれない存在として描かれることになります.
前作の「フォースの覚醒」の時から,ずっとカイロ・レンが「ダース・ベイダーのようにはなれない」と悩んでいるのは,別に「強さ」だけではないのです.
カイロ・レンはダース・ベイダー,すなわちアナキン・スカイウォーカーにはなれません.
レイがアナキン・スカイウォーカーだからです.
これは同時に,ラスボスみたいな存在感を出していたスノークが,あんなにもあっさり討ち死にしたことの理由でもあります.
所詮,スノークはそういう器ではなかったのです.


(5)レイの出自は?
レイはルーク・スカイウォーカーであると同時に,アナキン・スカイウォーカーの再来です.
なので,レイの出自もアナキン・スカイウォーカーと類似したものになると私は予想しています.
一応今作でも「謎」にされた主人公・レイの出自ですが,多分私は「フォース」によって誕生したのだと推測していおります.
そう,アナキン・スカイウォーカーのように.
覚えておいででしょうか? アナキンに父親はいません.
母であるシミ・スカイウォーカーが処女懐胎して産んだ子供です.
まるで聖母マリアがナザレのイエスを産んだかのようですね.
まあ,キリスト教系の文化圏の映画ですからね.
一方,今作においてレイは,ルークがニート生活をしていた島の地下空間で不思議な体験をします.
そこで彼女は「両親に会いたい」と願いますが,そこに映し出されたのは彼女自身でした.
まるで彼女に「親」がいないかのような演出ですね.
これは私の完全なる推測ですし,何かの都合で変更になる設定かもしれませんけど,レイはきっとアナキンのように片親無しで誕生した「キリスト(救世主)」です.


(6)最後のジェダイは誰?
タイトル回収のための「最後のジェダイ」はルーク・スカイウォーカーということになるでしょう.
実際,ジェダイの書物は霊体化して現れたヨーダが雷を落として燃やしてしまいました.
これが意味するものは,それまでの「ジェダイ」が現時点で滅んだということです.
そして,新たなるジェダイがレイによって始まるということ.
さながら,旧約聖書を廃して,新約聖書を編むようなものでしょうか.
やっぱりキリスト教系の文化圏の映画ですからね.
そういう展開が好きなんだと思います.


私の憶測が入った解釈ではありますが,多分そんな感じなんだろうなぁと思いながら「最後のジェダイ」を見ておりました.
それだけに,本当にそうなのか続編が楽しみでもあります.