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選挙結果の話

選挙結果が出ましたね.
自民圧勝というのか,現状維持というのか,評価はいろいろでしょうけど.

先日お話ししたように,私は選挙・投票には滅多に行きません.今回も行きませんでした.
選挙結果にも関心がないとも言いましたが,全く目を通していないわけではありません.
それなりに国情は分析しています.

「投票しなかった奴は政治に口出しするな」と言い出す人もいますが,投票した奴だからと言って口出しできる道理もありません.
選挙なんて所詮は人選びです.裁判員制度とかみたいに抽選で決めたっていいくらいだと思います.

そもそも,「我こそは選挙で投票した者であるぞ!」ってドヤ顔したところで,その選挙結果にあれこれ言っても無駄ですよね.もう結果は出ているんだから.
これはちょうど,我々の業界で言うところの「オープンキャンパスの来場者数」とか「入試志願者数」に対する講釈と似たところがあります.
そんな話を以前したこともある.
オープンキャンパスの来場者数を想う
実のところ,選挙と大学のオープンキャンパスや志願者数争奪戦はよく似ています.

「政治家と国民」「大学と学生」,いずれも始まってからの取り組みの方が大事なのに,その入口に立ったところがゴールと思ってしまっている.
これは日本人の特性なのかもしれませんね.もしかすると,学校や大学教育の取り組み方を改善することで,半世紀くらいすれば選挙や政治への視座も変わってくるのかもしれません.

いずれにせよ,選挙で投票することが国民の政治的主張の表明であるという勘違いは早急に是正されるべきです.取り返しのつかないところまで行く前に.

ところで,私の地元の選挙区・高知2区では,「保守王国・高知」を示す結果が出ておりました.
無所属の広田一氏が,元農水大臣であった自民党・山本有二氏を破って当選したのです.
山本前農相が比例復活 高知2区は無所属候補勝利(西日本新聞2017.10.22)
もちろん,山本有二氏は農水大臣であった昨年にTPPを強行採決する旨の発言が物議を醸しており,これが響いたことは間違いありません.
ですが,高知県は農林水産業で成り立っている地域です.そんな地域出身である山本氏が農水大臣をやっているのに,政府のTPPの方針にホイホイついて行くような姿は地元民にどのように映ったか.

というか,もともと,高知2区での山本有二氏への信頼は薄かったんです.
昨年の記事である■山本有二:鳥無き島の蝙蝠にノミネートでも書きましたが,私の両親を始めとして,地元民の方々の評判はすこぶる悪い.
昨年の農水大臣での所業を見た高知県民は,ついに山本氏を見限ったと言えます.

先ほど高知は保守王国だと言いましたが,本当に保守的なんです.もともと,昨今の自民党中枢部が掲げているような左翼思想には反発する気質があります.
2005年の郵政選挙の時も,高知では自民党議員を当選させる一方で,根強く郵政民営化反対の嘆願がありました.
さらに言えば,高知は保守王国である一方で,共産党王国でもあります.
2013年参議院選挙日本共産党得票率
2012年衆議院選書日本共産党得票率
つまり,右翼と左翼の両翼が強いという,とても特徴的な地域なんです.
「保守=自民」「保守=反共産」と考えているニワカ者には分からないでしょうけど,この感覚は大事です.

別に難しい話ではありません.これが本当の意味での保守的な地域なんです.
右翼が強くなったら左翼に移り,左翼が強くなったら右翼に移る.
そうやってバランスをとるのが保守です.

かつての高知県知事である橋本大二郎氏は,高知の県民性をこのように評価したとされます.
※私の父から伝え聞いた話ですので,間違っていたらごめんなさい.
「高知県の人は議論を好む.あれをすればいい,これをすればいいと,いろいろ面白い提案をしてくれるのだが,問題なのは,いざそれを始めるとなった時にまとまりがない」
えぇ,分かります.
何か一つのことで一致団結することはありません.天邪鬼気質っていうのでしょうか,必ず対立構造を作りながら進めるんです.傍から見たら面倒くさいのでしょうけど.
畢竟,トップダウンが嫌いなんでしょうね.現場でアレヤコレヤと話し合いながらやるのが好き.だから保守気質も維持される.

そう言えば,2014年に文科省が企画した「スーパーグローバル大学構想」ですが,それに応募した高知大学のプロジェクト構想名がこれ↓
「スーパーグローカルな高知大学の形成」
平成26年度スーパーグローバル大学等事業申請状況(文部科学省:PDFページ)
構想名からして企画の趣旨を真っ向否定.さすがトップダウンが嫌いなだけはある.
もちろん不採択でした.

今回当選した無所属の広田一氏も,以前は民主党からの推薦を受けていたこともあります.
今回の選挙では民進党の成れの果てである「希望の党」からのオファーがあったそうですが,これを断り,完全な無所属で「反安倍政権」による選挙活動を展開しています.
つまり「反自民」を掲げているわけで,今回の選挙結果は高知が反体制・反中央を示したと言えます.
ようするに,安倍政権に擦り寄るような奴をここから出したくない,ということ.世が中央になびく時代になったから,その反対の道を選んだということです.

冒頭にお話しした,「選挙とオープンキャンパスは似たところがある」ということについてですけど,それを一言で表せば,
「獲得数(入場者数)は選挙(オープンキャンパス)が始まる前に決まっている」
ということです.
これはオープンキャンパスではなく入試志願者数にしても一緒.
さらに付け加えるならば,
「その獲得数(入場者数)を増やそうと躍起になることで,本来の政治(教育)ができなくなる」
と言えます.
だから程々にしなければいけません.難しいのでしょうけど.

大学がその年にどんなに広告を頑張ったところで,入試志願者数が増えたりすることはありません.
志願者数とは,大学がそれまでの過去5年,10年の間にやってきたことの結果です.
これは選挙結果も一緒ですね.というか,そうであるべきです.

例えば沖縄県では,その他の地方の情勢とは裏腹に,自民党が負けました.
沖縄、自民に逆風強く 3選挙区敗北
こういうことに対し,「沖縄は左翼が強いから」と批判めいたことを言う人達もいますが,そもそも,沖縄で左翼勢力が強くなってしまった経緯や,左翼に頼ろうとする状況に目を向けなければいけません.

私も必ず毎年1〜2回は仕事で沖縄に行きますし,ゼミの学生にも沖縄出身の人がいるのですけど,ここ数年,いろいろ話を聞いてみても,この地では反基地の機運が高まっているのを確かに感じます.
それは,「沖縄県民の多くは,本当は基地を望んでいる」とか「反基地運動は本土から来た活動家がやっていること」などというレベルではなく,ようするに中央政府のやり口に辟易している住民は多いんです.
ですから,今回の沖縄の選挙結果は真摯に受け止め,基地問題について沖縄県民の要望はしっかり耳を傾けるべきです.

それに対し,「沖縄では反基地が勝ったかもしれないが,全国では自民が大勝している」と言い,その挙句,「だから沖縄は,日本政府における基地政策を聞き入れろ」と言い出す人もいます.
やばいですね.日本各地で選挙をして,そこから議員を選出している意義が分かっていないんでしょう.
2010年の民主党・鳩山政権の時にも同じこと言えばよかったのに.「“最低でも県外” は日本政府における基地政策なんだから,国民は聞き入れろ」って.

結局,これまでに沖縄県民の顔を札束ではたくような政策を続けてきたつけが,今になって噴出してきているんです.
そのつけは国民全体で考えなければいけないし,丁寧に向き合わなければならない事です.
その他,沖縄基地問題に関する話は過去記事にもありますので,ご参考まで.
沖縄基地問題を諦める
続・沖縄基地問題を諦める:私と同じ認識を示した某女性歌手への保守系論者の反応

他にも,「どうしてこんな奴が当選したんだ!」と憤りたくなる選挙結果はあるものです.
でも,彼ら/彼女らが当選したからにはそれなりの理由があるはずです.
その候補者に政治家になってもらおうという人々の要望はあったはずで,それがどういう性質のものかを考えなければいけません.
そこに善悪や正誤を見出すかどうかは別としても,これらをしっかり分析し,次の時代に備える.
こうした飽くなき取り組みが,政治の質を維持するためには大事だと想うのです.