2017年8月6日日曜日

子供の「自殺」について落ち着いて考えよう

「落ち着いてられるか!」とお叱りを受けるかもしれませんが,まぁまぁ落ち着いて.
このブログでは何度か取り上げている子供の自殺についてです.

子供の自殺に関するニュースが一段落しているので,この機会に現状確認をしておきましょう.

まずは自殺について,全体を俯瞰してみます.
厚生労働省作成
ここで押さえておきたいことは,自殺は「総数」として観察しても急激な増減が起こりうるものだということです.あと,男女差も非常に大きい.
グラフを見て一目瞭然ですが,1998年に急増しています.この原因はデフレ不況へ突入したことにあるとされていますし,2004年の急増については「派遣法改正」により製造業への派遣労働が解禁され,低所得層にトドメを刺したたとみる向きがあります.
その後,2008年頃から緩やかに減少.おそらく,心理的・精神的に不況慣れしてきたことと,(これは不謹慎な言い方にはなってしまいますが)経済状態が不安定だった人が,98年〜08年までの10年程であらかた死に尽くしたというところでしょうか.
つまり,自殺というのは社会状況や心理的な影響を多分に受けるものなのです.

では,次に子供の自殺の全体像です.
ネットで入手できる2007年以降の警察庁が発表しているデータを用いて私が作成しました.
元データにあたりたい人はこちら→■自殺者数(警察庁Webサイト)
まずは年代別比較.
前述したように,ここ10年ほどは自殺者数は減少しております.
子供の自殺については,当然といえば当然ですが,非常に少ないことがわかります.変動も少なく,ずっと横ばいです.

これを子供(未成年)の自殺者数のみピックアップしたのが以下のグラフです.
よく,「いじめ問題」とセットで「子供の自殺」が問題視されますが,人数としては少なく,変動も小さいのが特徴です.

子供といっても属性はさまざまです.小中高生,専門学校生に大学生と多様ですね.
それらの属性ごとに推移をまとめたのが以下です.
※年齢で切っているわけではないので,高校生以上の中には20歳以上の人もいる可能性があります.
上の総数で見たとおり,それぞれ横ばいです.
それにしても大学生死にすぎ・・・.
大学生と専修学校生の自殺が低下傾向にあるのは,成人と類似していると言えます.2008年〜2010年までの自殺者急増は,就職活動中の学生にリーマン・ショックの影響があったものと考えられます.

では,こうした子供の自殺の原因はなんでしょうか?
警察庁では,自殺の原因を大きく6つに分類しています.
1)家庭問題:親子・夫婦・親類との不仲や,介護疲れなど
2)健康問題:不治の病や身体障害,うつ病や精神疾患など
3)経済・生活問題:事業不振や就職失敗,借金など
4)勤務問題:仕事の失敗,職場の人間関係,仕事疲れなど
5)男女問題:結婚をめぐるトラブル,失恋,不倫など
6)学校問題:進路や学業不振,いじめなど
これらのうち,遺書等の自殺を裏付ける資料により明らかに推定できる原因・動機を自殺者一人につき3つまで計上したものを集計しています.
※上記のような集計であるため,一人の自殺者で複数件該当する場合もある.
やはり子供の自殺原因は,主に「学校問題」であることがわかります.
その数は年によって上下幅が大きいものの,約170人で,プラスマイナス20人くらいで推移していると言っていいでしょう.
一方,減少傾向にあるのが「健康問題」で,やや増加傾向にあるのが「家庭問題」です.
健康問題を原因とする自殺が減っているのは,医療技術の発達や学校現場でのメンタルヘルス活動の影響があるのかもしれません.あと,学校保健により身体障害や精神障害への理解が進んでいることも考えられます.

さて,学校問題を原因とする自殺ですが,その内訳が気になるところです.
3年前の記事である■子供の自殺原因「いじめ」は2%,という記事への反応への反応でも書きましたが,世間の関心は「いじめ」によって子供がどれだけ自殺しているのかに関心が向けられています.
ご覧のように,子供の「学校問題」における自殺原因は学業や入試に関することなんです.
よく,「報道されている実態と違う!」という指摘があります.
そんなわけで,こんなネット記事もあります.
いじめ自殺を年間3件と報告、実態とかけ離れすぎた内閣府データ(mag2news)
別に「いじめ」によって自殺している子供が少ないから問題ないと言っているわけではありません.ただ,事実に則して対応しないと後々大問題になると心配しているのです.
報道されているのは「いじめと “疑われる” 自殺の事件」です.そして,その報道は年間何件ですか? 数件でしょ? 
警察が捜査を進めていくうち,「いじめ問題も考えられたが,結局これは健康問題による自殺だな」となる場合だってあります.だからこの数値が「実態」なんです.

そんなことより,全体の傾向を俯瞰し直してください.
自殺の原因と強力な関係性がありそうなことはなんでしょうか.
それは,社会の不安定さです.

1998年に日本が不況に突入した途端,自殺者が約2万5千人から約3万人へと激増したのです.これは大学生や専門学校生にも影響を大きく影響を与えています.
つまり,将来の展望が見えなくなった時,人は自殺を考えてしまう可能性が極めて高い.

子供の自殺の原因をみても,その主因は「将来への不安」と読み取ることができます.
子供にとって学業不振や進路の悩みとは,比較的遠い将来のことを映し出すものだからです.社会人となった今では客観視できるけど,子供の時分は「学校の成績」と「進路決定」が人生の全てであったという大人は多いのではないでしょうか.
健康問題にしても「将来への不安」を惹起するという意味で,結局はそれが引き金になっている可能性は高い.

ひとまず現状把握はこのへんで終了.
次回は学校でできそうな自殺対策はなにか?について考えていきたいと思います.
それは「いじめ対策」にも直結する可能性があります.

こうしたことにヒントを与えてくれそうな研究が紹介されている書籍があります.
岡檀 著『生き心地の良い町』


自殺問題に関心がある方にオススメします.
もっと言えば,「いじめ自殺問題」に怒髪天を衝く想いで「加害者を許すな」「教師を吊るし上げろ」と怒鳴り散らしている人にこそ読んでほしい.

「子供を自殺に追い込んでいるのは,むしろ貴方のような考え方ですよ」と後頭部をハンマーで殴られるような衝撃を受けること間違いなし.

著者は,自殺の原因を調べてそれを取り除くという考え方ではなく,自殺を「社会」という相互関係の中から発生する現象と捉え,自殺が少ない集団の特徴を調べることによって「自殺予防因子」を探ろうという試みです.
自殺率が極めて低い地域「徳島県 海部町」に焦点を当て,その地域社会は他と何が違っているのか分析しています.

その研究結果を見た私は,「やっぱりね」と膝を打ちました.
主観的感覚からの推察でしかなかったものに,科学的データの裏付けがあり嬉しく思います.
と同時に,いじめ問題に対してこんなに大炎上して「いじめ防止対策推進法」なんぞ作ってしまう我が国は,「自殺大国・日本」の称号がお似合いである気もします.

詳細はまた後日記事にします.

※そして記事にしました.
続・子供の「自殺」について落ち着いて考えよう