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男子教員と女子学生

「男の先生と女子学生との間で,怪しい関係になることってあるんですか?」
という質問を良く受けます.

そうならないよう日々配慮しているのが大学内部ではあるのですが,どうしても人間らしい一面は出てきてしまいます.

「女性の先生も,男子学生と何かあったりしないんですか?」
などということで,同僚の中でもこの手の話題で盛り上がることがあります.

映画やドラマの設定や展開としても,「男子教員と女子学生の恋愛関係」というのは頻出します.それが基で結婚まで向かうという噂も耳にしますね.
では実際はどうなのかというと,結構あります
あるから,予防と火消しが慎重に行われるのです.





これは教員と学生に限らず,医師と患者,弁護士と依頼人なんかもそうだと思います.
目指すべき目標を共有する関係では,自然と信頼感が宿って親密になっていくものです.
かく言う私も,自覚はないけどそんな状況に陥っていたことがあるらしい.


前任校を出る際,卒業生の一人からこんな話を聞きました.

「先生って,その後◯◯さんとはどうなんですか? これからは遠距離なんですか? めっちゃ気になります!」

◯◯さんというのは,その学生と所属ゼミが同じだった女子学生で,友人というほどでもないけど知った仲だったわけです.

その後? 遠距離?どうなんですかって言われも,どういうこと? って聞き返したら,

「だって,◯◯さんは先生のこと狙ってたでしょ.学生の間では有名でしたよ.だから,あの後どうなったんかなぁって」

ですって.
ぜんぜん身に覚えがない話だったのでパニクりつつ驚いていると,
「先生,それはいくらなんでも鈍感すぎます」

当時,◯◯さんとその学生は,卒業論文のテーマの都合で私が指導することになっていたのです.
必ずしも所属ゼミの担当教員が論文指導するわけではない,というのは大学内部ではよくあることです.

そんなわけで,この2人は研究計画,データ分析,論文執筆といったことをするため,私がいつも仕事をしている研究室に頻繁に出入りしていました.

「◯◯さん,先生の研究室にいつも行ってましたよね.しかもずっといるし.私が来たときには既にいて,私が帰ったあとも残ってる」

でもね,こちらに言わせればそれは「勉強熱心なまじめな学生」という評価でしかないのです.
むしろ,君のほうに対しては「もっとちゃんと取り組めよ.◯◯を見習え」と思ってたくらい.

でも,言われてみればたしかに,ということはあって,例えばデータ分析を私のデスクトップPCでやった際,「出来たよ」って画面を指し示したら,私が座ってる椅子の肘掛けに手をつき,めちゃめちゃ接近して覗き込んできたことがありました.

私としては「パーソナルスペースが狭い子だなぁ・・・」って思てただけなのですけど.
パーソナルスペース(wikipedia)

「こっちはそれを後ろで見てて,笑いを堪えるの必至だったんですから.あの時先生,◯◯さんに『データは送ってるから,そっちのパソコンで見て』って冷たく言い放ちましたよね」

そりゃそうでしょ.卒論指導なんだから.
彗星じゃあるまいし,たまに異常接近してきたぐらいじゃ気づかないですよ.
でも,彼女曰く,他にもいろいろ「狙ってる」ことを示す行動があったとのこと.

「◯◯さん,ほぼ毎日お弁当を持ってきて研究室で食べていましたよね」

でも,そこでは卒論の話が多かったし,第一,その場には君も一緒にいることが多かったたし.それに,私がいない時も入って食べていたわけだし.

私も学生の頃はそんな感じだったから,これを不思議だとは思わなかったんです.

※事情を説明しましょう.
教員が不在の研究室に学生が入る,っていう風習は本当はダメなので(機密書類等があるから)是正するような勧告が出ています.でも,データ分析とか資料利用のために研究室の「隠し鍵」を用意し,学生に利用させている大学教員は多いものです.私もやってたという元・学生の読者も多いのではないでしょうか.それに,大学によっては落ち着いてランチを食べるための場所探しが大変なところも多く,こうした「ゼミ生」の特権を行使する3・4年生は少なくないんです.

「◯◯さんが先に研究室にいる時は,いつもドアが閉まってますよね.先生はドアを開けっ放しにする人なのに.開ける時,今日は何かが始まってるんじゃないかといつもドキドキしてました」

あぁ,これはたしかに問題だなぁと思っていたことです.件の彼女は,研究室に来るといつも決まって研究室のドアを閉めるんです.
これに改めて「開けといて」っていうのも変だから,閉めっぱなしにしてはいたのですけど.

※事情を説明しましょう.
特に,研究室で学生と二人っきりになる状況では,ドアを閉めないようにとの勧告が我々には出ています.ところが,ドアを開けっ放しにして学生と面談するなんてことできないし,教員への相談事の場合は学生がそれを嫌がる場合もあります.それに,夏はまだしも冬は寒いのでドアを開けっ放しにすることはできません.実際,「学生が求めればドアは閉めても良い」「暑い/寒い場合は閉めても良い」という,かなり適当な勧告なのです.研究室のドアを開けておくというのは欧米で実施されているようですが,それは廊下を含めた建物内全体が冷暖房されている所で可能な話です.日本のように節電意識が高い所でそれはできませんし,教育において師弟関係意識が高い日本では難しいですね.

「◯◯さん,4年になってヒラヒラの服を着るようになりましたよね」
知らんがな.

「メイクも派手になった」
分かりません.


そんな前任校での逸話を,仕事の合間に教職員でしておりました.
そしたら,その中の女性職員さんが笑いながら言うんです.「でも先生って,ホントに鈍感なんですね」って.

あらためて言うほどでもないのに,と言い返したら,
「だって,その卒業生の女の子も,きっと先生に気があったんでしょ.だから卒業後も訪問してきて,そんなことをわざわざ聞いてきたんですよ.なんかそんな気がします」
ですって.

あ,なるほど・・・.その瞬間,それまでバラバラだった事象が,一気に統合されます.新しい学術的考察を思いついたときのような,あの高揚感が迫る.

言われてみれば,そのあと彼女とは「せっかくだからドライブしましょう」ってことになって遠出したんです.思い出してみれば,あれもこれも,もしかしたら.
でも,完全ノーマークでしたね.やっぱり鈍感なんですかね.

とは言え,それくらい鈍感な方が「問題」を起こさないから良いと思われます.
我が道を行きましょう.

※以上の前置きをふまえ,続編がこちら
セクハラ教員と被害学生