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学校教育対談(3回目)

和田慎市先生との対談も,これで3年目になります.
今回も有意義な時間が過ごせました.

※過去のものはこちら
学校教育対談(2回目)

和田先生は,「理想論」では語れない学校教育現場に存在する切実な問題を取り上げ,それらに正面から向かうための態度と方法を啓蒙している方です.

和田先生にはご著者があります.
 

ウェブサイトもあります.

先生が元気になる部屋(和田慎市ホームページ)

第1回は私と和田先生だけでしたが,第2回では私の大学時代の後輩(東京都高校教諭)とご一緒しました.
そして今回は,さらにもうひとり東京都高校教諭を加えての対談となっています.
今回から参加してくれた高校教諭は,もともと和田先生のご著者の読者でした.まだ20代半ばの若手教師なのですが,着任した学校での生徒指導と職場トラブルに悩まされていた折,和田先生のご著者を手にとったのだそうです.

そんな経緯があったことと,さらには前回から同席してくれている私の大学時代の後輩とかつての職場が一緒だったことから,
「その本の著者である和田先生と会ってみますか?」
と誘いましたところ,「是非」ということになったのです.

いろいろな話題が出たのですが,そのなかのいくつかをピックアップしてみましょう.

(1)生徒は敵じゃない
少なくない若手教師は,生徒に舐められまいとして「生徒と対決する図式」をつくってしまいがちです.生徒のことを,屈服させるべき存在と見做すんですね.
そうかといえば反対に,生徒と仲良しになろうとする教師もいます.
正反対に思われがちですが,ようするにどちらも,教師である自分が生徒からどのように評価されているのかを気にしているという意味では同類です.
こうなると教師にとって学校という職場はつらくなりますし,結果,生徒のためにもならない.

学校での教師の仕事はそういうものではありません.
粛々と生徒のことを第一に考えた指導を進めていけばいい.それは生徒からの評価とは関係のないものなのです.
この部分は,“本質的な意味において” 絶対に世間一般からの理解は得られないところですので,なんとかして教師が(ある意味)開き直る必要があるところです.

(2)良い職場環境を作ることが大事
だからといって,「ほら,これが良い学校だぞ」と理想像を示せるものではありません.
学校現場とは,そこにいる生徒や教師,保護者の数だけ異なります.その中でどのようなアプローチをすれば最適な職場になるのか,個別に検討していかなければなりません.

良い職場であれば,良い教育ができます.
まずは先生たちが働きやすい職場を作ること.
それが教育再生の本質のように思うのです.

(3)ちょっと変わった生徒は大学で開花する
これは私が提供した情報なのですが.
さて,皆さんにお聞きします.「成績の良い学生」は,どのような「入試」を突破してきた学生に多いか予想できるでしょうか?
普通,センター試験や一般入試を経てきた学生が「良い学生」とされています.
たしかに成績の平均値を比べるとそうなることが多いんです.

ところが,前任校の様子や他大学の先生ともお話しておりますと,違う状況がそこには見えてきます.
成績トップ10とか,成績以外で顕著な業績を残した学生リストには,実は推薦入試を経てきた学生が多いんですよ! 意外でしょ.
推薦入試というのは,「AO」とか「スポーツ特待生」とか「指定校」といった,冷たい目で見られる入試のことです.
繰り返しますが,平均値でみると一般入試の学生が良いことはたしかなんです.でも,トップ10とか卒論の取り組み状況とか,学内外でのユニークな活動として際立った成長を見せる学生は「一般入試」には少ない.
まだそんな分析をしたことがないという大学の先生方におかれましては,ぜひこの観点で分析してみることをオススメします.いろいろな大学の先生方とお話してみても,かなり信頼性ある情報だと思います.

これはつまり,大学教育が一般入試に求められる学力と比べて異質なものを求めていると言えますし,高校の先生が「推薦」する生徒さんというのは,なんだかんだポテンシャルを秘めた学生だということでもあります.
もっと言えば,高校の先生は胸を張って生徒を育てていただきたいのです.先生方がお考えになっている「良い生徒」は,たとえ一般的学力が優れていなくても,大学教育において覚醒する可能性があるのです.

逆に言えば,推薦入試で入学させた学生が成績上位にあがってこない大学というのは,(私基準ですが)魅力の無い教育アプローチを展開している大学であるとも言えます.

ある都内の大学で体育の授業をやっているのですが,そこに「自分は指定校で入ったから頭悪いっす」と言っている学生がいるんです.
でもこの学生,授業を率先して盛り上げ,苦手な種目であれば下手なりに,得意な種目であれば全体を見ながら「場」を作ることに貢献します.それはもう見事です.
「期末テストがやばい」と嘆いていましたが,君は大丈夫.きっと10年,20年後に君の能力がフル稼働する時がやってくるでしょう.僕は確信しているよ.

(4)次代の社会を担う人物を育てているという認識をもつ
結局,我々教員は何をしているのかというと,次代の社会を担う人物を育てているんですよね.
彼らの夢や希望を叶えることも大事ですが,それよりも我々人類,少なくとも日本社会の安定のために貢献する人間を輩出することが大事だと思うのです.
だから,例えばいじめ問題があっても「被害者」だけでなく「加害者」も守ります.加害者も次代を担う子供だからです.加害者だけでなく,被害者にも指導をします.被害者にも指導すべき点があるはずだからです.

そういう話をしていたら,お酒の勢いもあって会が終わらなくなっていました.
こういう機会を今後も継続していきたいですし,「会員」を増やしていければと思います.


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