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続・大学の売り

前回の記事では,大学教育における市場原理主義について再考してみました. ■ 大学の売り 今回は,これについて再々考してみようと思います. 「大学の売り」とは何でしょうか. 前回の結論からすれば, 「そんなことを考えること自体が無意味」 というところに行き着くのでしょうけど. それでも,可哀想なことに「本学の売りはなんだろうか? 我々の強みとは何か?」と必死に考えることを仕事としている人はいるものです. 経営戦略会議とか特別運営者会議などといった名称をつけて,たいてい,嫌々やっています.場合によっては適当に集められた若手教員などが考えにふけっています.ご苦労さまです. そんな中,たまに自ら喜んでやっている人もいます.これもある種の可哀想な人です. 大学の売りについて考えている人 はまだいい. なかには,大学を売ることを考えている人がいます. 図書館機能を削減しようとか,由緒ある建物や門を「維持管理費が高いから」と売っぱらおうとします. こういう連中は売国奴ならぬ「売学奴」と言ってもいいでしょう. それを言い出したら, 「日本の売り」を考えている人 もいるようですね. ■ クールジャパン/クリエイティブ産業 (経済産業省) 私に言わせれば,これもある種の売国奴です. 今日はそんな話をしたいわけではありません.話を戻します. 「大学の売り」 よくよく考えてみれば,我々としても考えておくべきことの一つなのかもしれません. 古典的な物言いで率直に言えば,「それぞれの教員がやりたいこと」が売りです. それじゃダメだからと言われて,最近は「もっとクールな売りをアピールしろ」って言われています. この大学に入学すれば,他とは違うこんな良い事があるぞってアピールしなさいと. 大学にシラバスっていうのがあります.最近の大学はこの「シラバス」を充実させるようにお達しがきています. その理由ですが,「この大学に入学すれば,こんな良い事がある」ってアピールしたからには,その通りになるように保証しろということです. 十数年前に大学を卒業した人からすると信じられないかもしれませんが,最近のシラバスは,「第1週:◯◯についての概略,第2週:◯◯と◯◯の関係・・・・」といった調子で,毎週の授業内容を逐一書かねばらないのです. もちろん

大学の売り

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もう4年前の記事になるのですね.以前,「学生は大学の『客』ではない」ということを書いたことがあります. ■ 反・大学改革論3(学生はお客様じゃない) 学生のことを「お客様」という発想で取り組む大学の経営陣に辟易していた,或る若手教員の愚痴でした. そこから一部抜粋してきますと, 私が考える大学にとっての「客」というのは,しいて言えば「社会」です.学生ではありません. 学生という商品を,社会に納入しているという発想です. (―中略―) 「学生を商品として扱うなんて,あなたは薄情者だ」と言ってくる人がいるかもしれませんが,そんな人こそ私に言わせれば「商品」を金儲けの元として軽んじて捉えているドライな人です. 大量生産のようなシステマティックな商品ではなく,手作り木彫り人形のような商品.手塩にかけて彫り,磨き上げた商品.それが私の考える「卒業生という商品」です.材料の木によって,彫り方や表情が変わってくるわけですし,それだけに作り手も商品に愛着があり,良いお客さんの手に渡って欲しいと願うものです. あまりに良い出来だと,知り合いに譲ったり,自分の店に飾っておきたくなる.それが「コネ入社」であり「研究室や大学に残す」ということだと思うんですよ. 知り合いの大学の先生とお話したことがあるのですが,大学をサービス業の一つだと見做し,学生を「客」だと捉えるとどうなるのか. 相手は客なので,売り込むものがあることになります. 大学の売りってなんでしょう? 過去に ■ こんなホームページの大学は危ない とか, ■ 「教職員用」危ない大学とはこういうところだ という記事を書いているのにカマトトぶってるのもなんなので結論から言います. 一言で言えば, 「コストパフォーマンスの良い学生生活」 です. いろいろと手を変え品を変え誤魔化そうとしますが,ようするに「うちに来れば大変な思いをしなくても楽に就職できますよ」ということに収斂されます. それが今の大学経営陣の主たる運営動機です. 本当です.終わってるんですよ. 「とは言え,そうじゃない先生も少しはいるんでしょ? お酒飲みがらゼミしたり,授業に出席しなくても全員に『優』を出したり,科目名とは全然関係ない話で授業の大半を過ごしたり.そういう人がちょっといれば大丈夫でしょ」

鳥無き島の蝙蝠たち(8)矢野絢子

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アメーバブログより http://profile.ameba.jp/junko-yano/ 歴史上の人物ではない人も入れておきます. 矢野絢子 さんです. ■ 矢野絢子 (wikipedia) 前回の「坂本龍馬」でもお話したように,四国や高知には「有名人」という存在が少ないのですけど,有名かどうかなんて気にせず我が道を行くのが真の四国人たるものです. そんな四国人を代表する人物,まさに「鳥無き島の蝙蝠」らしい人です. この人は歌手です. 私は歌を聞きませんし音楽に造詣が無いのですが,何かの拍子に「高知の伊野町出身の歌手がいるらしい」ということでこの人を知り,youtubeでその歌声を聞いて感銘を受けました. ちなみに伊野町ってのはこういうところです↓ 伊野町のどこか「車窓より」 撮影者:私 矢野さんの歌はyoutubeで聞けます↓ ■ 矢野絢子 てろてろ (youtube) この歌を聞いて思ったのは,「高知の道の歌だなぁ」ってことです. 地元の川沿いの道を自転車で走る情景が鮮やかに広がります.たぶん今頃の季節.ちょうど上の写真のような感じ. この他にもyoutubeで聞ける曲はありますが,私はどれも好きですよ. もっと大々的に宣伝すれば売れる歌手になれる気もするのですが,拠点を高知市内にしてインディーズ活動している人です. 今時インターネットがあるし,通信販売すれば済む話だから「音楽活動」をするぶんには構わないのでしょうけど. 定期的に高知市内でライブをやっているとのこと.いつか行ってみたいと思います. この人の歌詞には「カタカナ語」が出てきません. ■ わざわざカタカナ語を使おうとする人 そういうところも硬派ですね. 『てろてろ』の歌詞にこんなのがあります. 知らない所に行きたいな 嘘だよ本当はね ここに居たい ここに居たいんだ  まさに四国人の心を謳った歌です. 今後もますますのご活躍を祈念しております.

大学院進学を考える人へ「実写版・パトレイバー」

Huluという動画サイトで,アニメ作品である「機動警察パトレイバー」が配信されています. ■ 機動警察パトレイバー (wikipedia) 1989年の作品ですが,高知県出身の私はもちろん見たことがありません.こういうアニメは高知ではテレビでやっていないからです. つい最近まで存在も知りませんでした. もともと漫画とアニメで有名になったロボット系のSF作品なのだそうですが,それを実写にするっていうことで話題になったようで. それもこのHuluという動画サイトで取り扱われているということで,「どれどれどんなものか」と見てみたわけです. それが『THE NEXT GENERATION パトレイバー』 ■ THE NEXT GENERATION パトレイバー (wikipedia) 2014年4月から2015年の5月までの1年がかりで7回に分けて劇場公開したとのこと(これもリアルタイムではその存在を知りませんでしたけど). 今回,Huluでその完結編である『 THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦 』が配信されるとのことで,せっかくなので全話通して見てみたんですよ.   結論から言って,めちゃくちゃ面白い. マニアックな面白さが散りばめられていて,逆に言うと,見る人を選ぶんじゃないかと思います. 実際,各所で語られている映画レビューの評判はすこぶる悪い. でも,見る人を選べばかなりハマるはずなんです. 誰にオススメできるかと言われれば,間違いなく「大学院生」です. この物語の舞台となっている「特車2課 第二小隊」というところ,完全に「大学院の研究室」なんですよ. 大学院進学を検討している学部生から,よくこんな質問があります. 「大学院ってどんなところですか? 院生ってどんな感じですか?」 これについて以前もご紹介したのが,小説である 森博嗣 著『喜嶋先生の静かな世界』 .かなり大学院の雰囲気を味わえる作品としてオススメしています.そのものずばり大学院生を扱った作品ですし. ですが今回ご紹介する『パトレイバー』は,一見すると大学院とは関係なさそうです. でも,ここに流れている雰囲気は大学院の研究室のそれと完全に一致しています. 主演女優の真野恵里菜さんっていうんですか.彼女の演技が上手いのか

やっぱり東京を諦める

もう一ヶ月以上前の記事になるのですが, ■ 東京を諦める というのを書いておりまして,そこでは舛添要一氏を都知事に選んだ東京人を茶化していました. その記事の最後に,東京人に対する評価を,なんとなくの思いつきによる喩え話として入れていたのです.それは以下のとおりです. ホクホクと塩焼きにされた鯛を見せられ, 「これを今から活け造りに変えてくれ」 と言われても困ります. 炊き込みご飯にするくらいならなんとかなりますが,活け造りは無理です. それと一緒. ただ一番困るのは,塩焼きでもそれを美味しく食べればいいものを, 炊き込みご飯に作り変えたボソボソの鯛を「うまい,うまい」と言いながら食べちゃうのが東京人でもあることです. まさか本当にそんな事態になるとは. 「あぁ,やっぱり・・・」 と思いつつも,呆れております. 今更かもしれませんけど, 舛添都知事が辞任するんですって . まさか辞任にまで発展するとは.でもどうやら本当のようです. 一応ニュースは耳に入っていたのですが,あんまり興味なかったので詳細を知りませんでした. こう言っちゃなんですけど,辞任しなくてもいいんじゃないかと思っていました. やったことは悪いことですが,謝罪して「これからはしません」ということで決着すれば済むことだとも思うのです. あんまよく知らないけど,グレーなことを含めても何億円か無駄使いしてたってだけの話でしょ? そして新しい都知事を選ぶ選挙をやるんですよね. そっちの方がよっぽどお金の無駄使いだと思うんですけど. より良い都知事が選べる保証もないのに.さすが,東京人は中国人とよく似ていますね. ■ 東京人と中国人はよく似ている 鯛の活け造りが食べたかった東京人は,塩焼きを見せられ「活け造りにしてほしい」と頼みました. でも,現在の東京という場所で活け造りを食べることは無理です.絶対無理なんです. だったら塩焼きであってもそれを美味しく食べればいいものを, 活け造りがダメなら何が出来るんだ? と聞いてくるので, 「まぁ,炊き込みご飯くらいですかねぇ」っていうことになったから, 「塩焼きは嫌だから,炊き込みご飯に変更だ」というわけで, 塩焼きから作り変えたボソボソの残飯みたいな炊き込みご飯が出されたとしても, きっとそれを「うまい,うま

鳥無き島の蝙蝠たち(7)坂本龍馬

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このシリーズは当初(と言っても7年前だけど),土佐・高知にまつわる人だけで作ろうとしていました. なので,高知の人が多くなってしまい,その他3県が手薄になることをお許しください. でも,もともと土佐・高知はかなり特徴的な人が多いんですよ. 今回は坂本龍馬です. ■ 坂本龍馬 (wikipedia) 見方とスタンスによって評価が大きく変わる人. ヒーローとして見ればこれほど面白い人はなく,斜に構えて見ればただのビジネスマン,もっと言えば死の商人. いずれにしても,激動の時代を駆け抜けた興味深い青年であることは評価に値すると思いますし,生き方が「劇的」であったこともたしかでしょう. 実際,旧暦にすると生年と没年が同じ日の人としても有名です. (天保6年11月15日生まれ,慶応3年11月15日没) 坂本龍馬に対するエピソードは各方面に山のようにあるので,この記事でどのように取り上げるか悩みましたが,高知生まれの私ならではの話ができればと思います. 実は,県内でも彼への評価はかなり分かれていて,ちなみに我家の評価もさほど高くありません. というのも,私にとって高祖父にあたる人が坂本龍馬と知り合いだったそうで,この高祖父が坂本龍馬のことを良く言わなかったとのこと(悪く言ったわけではない). この人が有名になったのは,「土陽新聞(のちに高知新聞となる)」で明治維新における郷土の偉人として紹介されたからなのですが(坂崎紫瀾の小説「汗血千里の駒」として世に出る),その時高祖父は, 「騒がれるほどの何かをした人ではない.計算高い目立ちたがり屋だった」 という趣旨のことを言ったそうです. 高知には「目立つ有名人」が少ない んです. だから高知県人としては坂本龍馬一人の威光に頼ろうとするところがあります. 高知に出張観光その他で来たことがある人は気づいたと思いますが,あちらこちらに「龍馬」の字が確認できます. 龍馬が好き過ぎる県人は,しまいには高知空港を「高知龍馬空港」などと愛称をつけました. こういう状況に呆れ返って声も出ない高知県人も少なくないんです. 龍馬よりも武市瑞山や後藤象二郎の方がよっぽど偉人だろ. 龍馬一人に頼るメンタリティが,今じゃ広末涼子一人に頼るメンタリティへと続いている. なんて声があるのも忘れないでくださ

井戸端スポーツ会議 part 33「野球のコリジョンルール」

今年から日本プロ野球でも導入した「 コリジョンルール(衝突ルール) 」. かなり問題視されているようですね. ご存知ないという方は以下のニュース記事やウィキペディア情報をご確認ください. ■ 誰も得しない? コリジョンルール 審判とプレーヤーの溝も深刻 (スポニチ) ■ コリジョンルールで何が変わった? (スポーツナビ) ■ 衝突ルール (wikipedia) コリジョンルールとはなにか. ウィキペディアから引用すると, (1)走者が捕手に強引に体当たりをすることを禁じる (2)捕手のブロックと走者の走路を妨害することを禁じる (3)送球がそれるなど止むを得ない理由で捕手が走路内に入る時も衝突をなるべく避けること (1)の場合,これらのプレーが悪質な場合は,審判団の解釈により選手に警告や退場を宣告できます. (2)の場合はランナーがセーフ(ホームイン)になります. そして,プロ野球でたびたび問題視されているのは,どこからどこまでが「キャッチャーがランナーの走路を妨害したといえるのか」という判断基準です. つまり(2)と(3)のところで「走塁妨害だ」「いや妨害していない」ってことでもめているんですね. でもこれって簡単な話です. 「ホーム・クロスプレー」は危険な衝突事故を発生させるのでやめてください .ということです. ホームベースに向かうランナーに対し,キャッチャーが体を入れて妨害したらセーフになる.それだけのこと.意図的な身体接触が発生する場面を回避するルールなので,「ホーム・クロスプレーは野球の華」と考えている人にとっては「判断基準が不明瞭」などと不平を言うことになります. けれど,そもそも「身体接触を起こすな」というルールなのですから,これまでの認識を改めてもらう以外に道はない.ルールに慣れるしかないのです. キャッチャーってプロテクター(防具)をつけているでしょ? あれはランナーとの衝突に対応するためではありません. 本塁の審判(球審,アンパイア)もプロテクターをつけているのと同様,ピッチャーから投じられるボールや,ファールチップ(打ちそこない)のボールから身を守るためのものです. そもそも, コリジョンルールが登場するより以前から,高校野球のルールでは「キャッチャーがホームベ

ゴジラと巨神兵

せっかくなので,ゴジラの話をもう1つ. 実は,ある意味我々スポーツ研究者にも「ゴジラ」は身近です. 「スポーツゴジラ」っていう無料雑誌があるんです.知ってました? ■ スポーツゴジラ (スポーツネットワークジャパン) 「知ってた」という人は極めて稀でしょう.かなり知名度は低いと思われます. でも,無料だけど硬派な記事が載っています.私は嫌いじゃない雑誌です. よかったらどうぞ. 今回ゴジラの話をしたのも,この雑誌が手元にあったことがきっかけです. 「へぇー,スポーツ “ゴジラ” ねぇ」って. どうして「ゴジラ」の名前を雑誌名につけているのか気になるじゃないですか.なのでネットを調べてみたら, 「おや? ゴジラの新作が出るんだ」っていうニュースにたどり着いたんです. (主目的だった雑誌名の由来にはたどり着きませんでしたが) さて今回の『 シン・ゴジラ 』. この予告編を見て思ったのが,『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の冒頭にある『 巨神兵東京に現わる 』との類似性でした. しかもどうやら新作ゴジラの監督は,『巨神兵東京に現わる』を作った2人,庵野秀明氏と樋口真嗣氏とのこと.あぁやっぱり,って思います. で,根拠ゼロの直感的な妄想ですけど, この2人は「巨神兵東京に現わる」を「ゴジラ」でやりたいんじゃないか .そう感じました. せっかくなので比べてみてください. ■ 巨神兵東京に現わる (の編集版)(youtube) ■ シン・ゴジラ予告 (youtube) 「巨神兵東京に現わる」は本編がyoutubeには落ちてなかったのですが,気になるようでしたら「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」あたりを借りて見てください. 前回記事の最後で,私は「 もうそろそろゴジラは日本全土を焦土にしたらどうか 」ということを述べましたが,「巨神兵東京に現わる」は文字通り「世界を焦土に」しています. 新作ゴジラがどんな展開と結末になるのか予想するのは野暮ですけど,この2人の監督ならやりかねないな,って思います. それに,「巨神兵東京に現わる」から伝わるメッセージも, 「ゴジラという存在」 と妙に共通性があるように私は感じるのです. ヒトの力ではどうにもならない存在. 破壊神. 巨神兵 ≒ ゴジラ. 「巨神兵東京に現わる」にこんな

ゴジラの新作が出るらしい

今夏,ゴジラの新作が出るらしいんです.「シン・ゴジラ」っていうそうです. ■ シン・ゴジラ (公式HP) 懐かしいですけど,映画館では見ないな. (いろんな意味で)ネット配信されるようになったら覗いてみたいと思います. ゴジラを見たのは小学生の時まででしたね. 私の町(いや,集落)の役場の広間で,子供相手に映写会をする企画がありまして,それで見てたくらいかな. 小学校に入って間もない頃の作品が『 ゴジラvsビオランテ 』.最後の記憶は『 ゴジラvsメカゴジラ 』です. 実際,スクリーンに映る映像を見たのはこれが人生で初めてでした.めちゃくちゃ感動したのを覚えています.今じゃ自作のパワポや動画をスクリーンに映して講釈を垂れる仕事をしています.人生は分からんですな. いつも来ていたあのオジサン,どういう人だったんだろう? 映画を見る機会がない田舎の子供のために活動してたんでしょうかね.閉会の挨拶で「次は伊与喜(私達の隣の集落)に行きます」なんてことを言っていたので,そういう感じだと思います. 現代版・紙芝居のオジサンみたいな存在でした. ところで,ちょっと前の記事に, ■ 鳥無き島の蝙蝠たち(1)古代四国人 っていうのを書いたのですが,見事に神武天皇は四国に上陸せずに近畿・橿原を目指して進軍していました(神武東征伝説). なぜ四国に上陸しなかったのか.考えられる最も自然で妥当な理由は,古代四国人の戦闘能力が高すぎて,神武軍は北九州・中国地方を迂回しなければいけなかったから,というのを紹介したのですけど. 四国に上陸できなかったのは神武軍だけではありません.実はゴジラもそうです. ゴジラも四国に上陸できていません . さすがに現代四国人はゴジラに対抗できません.ではなぜゴジラは四国に上陸できないのか? 一説には,四国には強力な結界が張られているからだそうです. 四国八十八ヶ所がそれだとされています. ■ 四国八十八箇所の結界に秘められた真実 (個人ブログ) また別の説では,仮面ライダーBLACK RXが守っているともされています. ■ 四国安全都市宣言 (ニコニコ大百科) それはさておき,このゴジラシリーズ,いつまで続けるんでしょうかね. 「vsビオランテ」「vsキングギドラ」「vsモスラ」「vsメカゴジラ」しか本

鳥無き島の蝙蝠たち(6)島村速雄

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こうしてシリーズにしている四国の偉人話ですが,たまに授業でも脱線話としてすることがあります.長宗我部元親はもとより,やなせたかしとか空海とか. 勘の良い学生は気づくんです.私がこの手の話で伝えたい事,実は授業とは “脱線していない” のだと. リアクションペーパーにそんなことを書いてくる学生がいます.こういう学生はその後一切授業をサボったとしても「優」にします. そもそもテストをやらせても高得点を取ってくる. 一昔前までの大学では,教員が一見授業とは関係のなさそうな脱線話をすることが常習的でした. 普通の授業よりもそうした脱線話の方を面白がる学生の方が多かったと思います. そして,この脱線話のなかに重要な考えるヒントが隠されている.私の恩師の授業を思い出してみても,そういうものが散見されます. 今,少なくない大学の学生はこうした脱線話をうっとうしがります. 「話していることのどれが重要なことなのか,判別しやすくしてほしい」 などと冷たい要望を小レポート用紙に書いている者までいる. こういう学生はたいてい成績も良くありません.色眼鏡で見ているわけではありません.自然とそうなるんです. 物事を抽象的に捉え,普遍性をもたせて考えることができる能力. 学生が大学で鍛えていることの一つです. もしこれを読んでいる貴方が学生でしたら,ぜひ先生の脱線話を注意深く聞くことをオススメします.授業の内容よりも,ノートテイクの価値はこっちにあるかもしれません. 今回は,前回の秋山真之に関連して,彼の上司である「島村速雄」を取り上げてみたいと思います. ■ 島村速雄 (wikipedia) 高知県出身の海軍人.最終的には大将にまで出世します(死後,元帥となる) 先般のNHK長編ドラマ『坂の上の雲』では,舘ひろしが演じていました.ちょっとカッコ良過ぎた人です. ウィキペディアの人物評にはこうあります. 「非常な秀才で智謀は底が知れない、軍人には珍しいほど功名主義的な所が無い、生涯はつねに他者に功を譲ることを貫いた、天性のひろやかな度量のある人物」 毎年,芸能人とか架空のキャラクタなどを対象として「上司にしたい人ランキング」なるものが企画されますが, この島村速雄こそ「上司にしたい人ナンバーワン」 かもしれません. 彼の

鳥無き島の蝙蝠たち(5)秋山真之

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これで4人目.とりあえず四国を一周しておきました. 今回は愛媛の秋山真之です. ■ 秋山真之 (wikipedia) かなりメジャーな人ではないかと思います. バルチック艦隊を打ち破った日本海海戦.東郷平八郎に「智謀如湧(ちぼうわくがごとし)」と言わしめた日本海軍きっての作戦参謀. 「本日天気明朗ナレドモ波高シ」 「皇国ノ興廃此一戦ニ在リ.客員一層奮励努力セヨ」 と言われれば,あぁこの人かと思い出す人も多いでしょう. 兄・好古も含め,四国人としては「坂本龍馬」並に歴史的厚遇を受けた人物です. それもこれも司馬遼太郎の影響ですね. 最近もNHKにて『坂の上の雲』が長編ドラマとして作成され,世間を賑わせていました. 坂本龍馬も秋山兄弟も,もともとは歴史に隠れていた存在でした.それを司馬遼太郎が掘り出してくれたとも言えます. それだけに阿波国の「三好長慶」の冷遇っぷりが際立ちます. この鳥無き島の蝙蝠たちシリーズの閲覧数をみましても,三好長慶への無関心さが悲惨です. ■ 鳥無き島の蝙蝠たち(3)三好長慶 世の皆様,とても正直なようで. 恐るべし司馬遼太郎. さて,秋山真之ですが,彼は前述のように「印象に残るフレーズ」を作る才に秀でており,東郷元帥が読んだ『聯合艦隊解散之辞』の草稿を担当したのも秋山真之だとされています. 原文はこちら↓ ■ 聯合艦隊解散之辞 (wikisource) 見事なまでの簡潔さで「軍人」の存在意義と心構えが述べられています. ところで,この解散之辞ですが,原文と現代語訳を読み比べた時に気になる点がいくつか. 特にこの部分. 而シテ武力ナル物ハ艦船兵器等ノミニアラズシテ、之ヲ活用スル無形ノ實力ニアリ、百發百中ノ一砲能ク百發一中ノ敵砲百門ニ對抗シ得ルヲ覺ラバ、我等軍人ハ主トシテ武力ヲ形而上ニ求メザルベカラズ。 武力とは兵器の性能だけではなく,それを活用する者の能力にある.百発百中の砲は,百発一中の砲100門に匹敵するのだということが分かれば,我々は主として武力を実体の無いところにも求めないわけにはいかない. という意味なんですけど. 後世,これが拡大・暴走解釈されて「武器が貧しくても根性でなんとかなる」という,帝国軍人の心意気に結びついていったのではないかと邪推したくなるものです. ハ

鳥無き島の蝙蝠たち(4)空海

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鳥無き島の蝙蝠.四国・香川県代表の筆頭と言える一人です. ■ 空海 (wikipedia) 「弘法大師」や「遍照金剛」の名でも知られている,四国・讃岐国(香川)出身の僧侶. 空海が開いた仏教の宗派が「 真言宗 」です. また,中国からうどんの作り方を伝えた人ともされ,讃岐うどんを愛する人々の間では「 讃岐うどんの開祖 」としても著名です. ちなみに,讃岐うどん好きの私は真言宗です. 幼少の頃,この空海にまつわる霊場・四国八十八ヶ所の寺の一つに住んでいたこともあります.叔父がその寺の住職なんです. 小さい頃に,お遍路さん(八十八ヶ所巡りをしている人のこと)に境内で遊び相手をしてもらっていた覚えがあります.あと,賽銭も入れずに鐘を突きまくって遊んでいたことも.よく住職から怒られていました. 小学生のころ,四国八十八ヶ所を全て回ったこともあります.なので空海に対しては思い入れが強いわけで. 私にとっては身近だった空海ですが,実はその存在を知らない人が圧倒的に多いんです. 前回の「三好長慶」もそうですね.戦国最強武将の筆頭なのに,「地味」ってだけで天下人ですらなかったことにされています.やっぱり四国は歴史の闇です. さて,そんな 空海は無類の天才 でした.もう既に伝説的存在となっているので誇張や歪曲が入っているでしょうが,それを差し引いても圧倒的な才能の持ち主であったことは間違いないでしょう. こういう人は千年に一人誕生します.その一人が空海です. 何が凄いって, 抜群のネーミングセンス です. 「空海」 なんと抑制の効いた,それでいて雄大な名前でしょう. これだけで格の違いが分かります. 「革新的イノベーション」とか「スーパーグローバル大学」,「生活の党と山本太郎となかまたち」などとネーミングする人たちに爪の垢を煎じて飲ませたいものです. 804年の遣唐使・留学僧の一人に空海が選ばれます.この時,空海は一般学生でしたが,その他の留学僧は皆,エリート中のエリート達でした. なぜこの留学計画に空海が選ばれたのかは謎だとされています. いずれにせよ,中国に渡った空海は, 20年計画だった仏教留学を2年で終わらせます . ホームシックで帰ってきたわけではありません.中国の先生たちが「空海君,君はもう免許皆伝じゃぁ」

井戸端スポーツ会議 part 32「イチロー」

いつこの話題ができるかと楽しみにしていたのですが,こんなに早くできるとは嬉しい限りです. 今日は野球選手である「 イチロー 」こと鈴木一朗です. ■ イチロー (wikipedia) 「近代スポーツ」および「野球」の発展からしても,そして日米関係について総合的に鑑みましても,この選手が伝説的存在になるであろうことは間違いありません. 私を含め,多くの野球少年に強烈な印象を与えた1994年の200本安打達成から22年間.生きながらにして日本スポーツ界の至宝となっています. とにかく「美しい」バッティングフォーム.60分間ずっとそれを見続けろと言われても苦にはなりません. むしろ,そんな編集動画がニコニコ動画とかで作られないか期待したいところです. ところで,図書分類法に日本十進分類法(NDC)というのがあります. ■ 日本十進分類法 (wikipedia) 森清 (もり・きよし)が デューイ十進分類法 (DDC) の体系を元に作成したもので、1928年(昭和3年)に発表し、翌1929年(昭和4年)に間宮商店から刊行された。(―中略―)日本の図書館における事実上の「標準分類法」であり、2008年の調査では公共図書館の99%、大学図書館の92%がこれを使用している(新規受入の和書の場合)。 図書の内容に応じて,0番〜9番までの10区分をしているものなのですが,実は「スポーツ」もこの分類のなかに入っているんです. 私も大学生になってから気にし始めたのですが(体育・スポーツが専門なので),てっきりスポーツは各分野において語られる話題・コンテンツの一つであり,些末な扱いをされているものとばかり思っていたのです. ではスポーツはというと,7番の「芸術」のなかの8番目に入っていて,いわゆる図書館の分類ラベルでは「780番代」となっています. もちろん,1876年に出来た デューイ十進分類法 でも700番代にスポーツがあって,つまり書籍業界の扱いでは, 「スポーツ」とは「芸術」 なのです. 大学1年生の頃には不思議に思っていたのですが,勉強を続けるに従い,「そうか,だからスポーツは700番代(芸術)に入っているのだな」と思うようになり,今に至ります. 楽器や絵筆を動かす手腕の巧みさと同様,身体を用いた芸術がスポーツなのです. 現在のスポ

鳥無き島の蝙蝠たち(3)三好長慶

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長宗我部元親に続き,四国の戦国武将をもう一人. ■ 三好長慶 (wikipedia) 阿波国(徳島)の三好郡に本拠地を持つ三好氏の中でも有能な武将の一人で, 「事実上の最初の天下人」 とされています. 詳細はウィキペディアをご覧ください. このシリーズ第1回でもご紹介したように, 四国・徳島は近畿・大阪京都に攻め入る上で好都合な場所 です. 海を隔てているので攻撃しにくい反面,防御も容易です. じっくり腰を据えて大阪湾を眺めるのが阿波徳島方式. 機を見て攻め入り,危なくなたら四国に戻ればいいのです. それを戦国時代にやってのけたのが阿波国の三好一族で,その最盛期を演じたのが長慶でした. 室町幕府管領の主君である細川氏を操り,足利将軍家をおさえることで三好政権を作り上げ,事実上,日本の天下をとっていたわけです. 保有していた領地も四国東部,淡路島,近畿と広大だった. 三好長慶は明らかに天下人でした. ですが,三好一族に対する後世の扱いが非常に悪く,戦国最初の覇者は「織田信長」もしくは「豊臣秀吉」だとされるようになってしまいます. どうやら,イノベーティブな政治や戦略を展開した信長や秀吉,独自に徳川幕府をつくった家康といった戦国の「三英傑」などと比べて, 長慶は保守的で寛大過ぎた からではないかと言われています. 保守的で寛大過ぎたとはどういうことか,気になりますよね. 1549年,なんだかんだあって京の都を制圧し,主君・細川晴元と将軍・足利義晴を追い出して天下人となった長慶ですが,彼らの息の根を止めることはありませんでした. 近江(滋賀県あたり)に逃がしたのです. いつの日かまた会えるその時まで. で,すぐ会えました. 1550年,打倒長慶に燃える細川晴元と足利義輝は,京都奪還に向けて「中尾城の戦い」を始めます. 長慶はこれを撃退. したのにも関わらず,なんと長慶は彼らに和談を申し入れます. 勝ったのに和談 . 長慶の法則です. 何がどう和談なのか分からない不気味な申し入れは,もちろん交渉決裂. 翌年1551年,こりもせず晴元と義輝は京都奪還に動きます.「相国寺の戦い」です. が,強大な兵力をもつ長慶に敵うわけもなく,あえなく敗退. そしてここでもまた長慶の法則が発動.

鳥無き島の蝙蝠たち(2)長宗我部元親

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この人が 本家「鳥無き島の蝙蝠(コウモリ)」 です. 記念すべき第1回では「 古代四国人 」をご紹介しましたので,続く今回は素直に長宗我部元親を取り上げます. 前回記事の冒頭でもお話したように,このシリーズはブログ開設当初の7年前から計画していました. だから2009年にこんな記事も書いていたのです. ■ 大河ドラマと高知県 記事の方向性が定まっておらず,ただ長宗我部元親を紹介するだけの記事. 今回はもう少し私なりの趣向を加えてお話ししたいと思います. なお,長宗我部元親の詳細はウィキペディアあたりを読んで下さい. ■ 長宗我部元親 (wikipedia) 7年前の記事でも書きましたが,もうそろそろ長宗我部元親をNHK大河ドラマあたりで取り上げてもいいのではないかと思うのです. ただ,元親をドラマにすると彼の晩年の荒みっぷりをどうするかが課題となります. 後継者として期待していた信親が戦死した後、英雄としての覇気を一気に失い、家督相続では末子の盛親の後継を強行し、反対する家臣は一族だろうと皆殺しにするなど信親没後の元親は久武親直の讒言があったとしても片意地になりそれまでの度量を失っていた。(wikipediaより) でも,それをきちんと描くのも良いかと思います. 人間の弱さを堂々と示す.その哀しみを丁寧に見せる大河ドラマも一考かと. 華々しく登場し,儚く死ぬのが英雄です. 今回はこれについて一考してみます. 元親を「鳥無き島の蝙蝠」と称して見下した織田信長,実はこの両者はよく似ている. 「嫌いな人は,実は自分自身とよく似ている」というものがあります. 同族嫌悪.ユング心理学の「シャドウ(影)」で言えば,普段自分が隠している自分のダメな部分を相手に投影してしまうというもの. 信長と元親は長く同盟関係にありましたので,両者の行動は互いに詳しく知れた間柄でもありました. 信長が元親を評価しなかったのも,もしかすると元親に自分とよく似たところを感じたからかもしれません. 幼少から青年に至るまで,信長はその粗暴の悪さから「大うつけ」と呼ばれ,一方の元親はひ弱な性格から「姫若子」と呼ばれていました. ところが政治と戦の場に出ると,両者はそれまでのマイナス評価を一変させます. 信長は家督を継ぐやいなや瞬く間に尾張を平

鳥無き島の蝙蝠たち(1)古代四国人

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「統計」「教育&大学改革」「危ない大学」「スポーツ」に続くシリーズ物として位置づけようと思います. 四国の偉人をご紹介するシリーズ,今回はその第1回. このシリーズはブログ開設当初から考えていたもので,どのような話の展開にするか迷いながら,結局7年が経過してしまいました. 考えるのも面倒になってきたので,見切り発車しようと思います. ボチボチ読んでいってください. もともとは私の地元である「高知」だけでシリーズ化しようと思っていたのですが,歴史的人物も扱うことになるので,高知に限らず「四国」という島単位で考えたほうがしっくりくるかなと. ちなみに,「 鳥無き島の蝙蝠(コウモリ) 」というのは,戦国時代の四国の覇者である長宗我部元親に対する織田信長の皮肉です. 有力大名(鳥)がいない島・四国を制したところで,それは「鳥(有力大名)」ではなくて「コウモリ」だ.という意味. 「鳥無き島の蝙蝠」 私はこの言葉が好きです.実は四国の人々のことをよく表しているからです. この言葉を違った見方をすれば, 世間の評判よりも独自の価値基準で生きている人が多い ,そんなふうに捉えることもできます. あともう一つ. 四国は日本の歴史の闇に隠れることが多い .そんな歴史の闇で音もなく羽ばたく姿は,蝙蝠と称されてもよいかと思うのです. そんな四国人列伝の第1回を飾るのは, 「古代四国人」 です. 歴史の闇を羽ばたく四国人を扱うこのシリーズの第1回にふさわしいかと思います. 時は古代日本.3〜4世紀頃.古事記,日本書紀で語られるお話です. 学校の授業で「神武東征」を習った時, 四国の者であればみんな疑問に思うのが, 「なぜカムヤマトイワレビコ(以降,「神武軍」)は四国を通って東征しなかったのか?」 ということです. 下図のように,豊後水道や瀬戸内海を渡っていつでも四国に入れそうなものを,一切触れずに橿原まで向かっているのです. そんな質問・回答がYahoo!知恵袋にあります. ■ 神武東征は、なぜ四国をスルーしているのですか それへの回答は1件だけ, 人間が殆ど住んでいない【未開の地】だからねw(runa_1_jpさん) というものですが,これはおそらく間違いです. 当時,もし四国が未開の地だったとすれば,なおさら四国をス

エクセルの散布図のオプションの「グラフに数式を表示する」の活用法

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ご多分に漏れず,本学でもエクセルを使ったデータ処理の実習をしています. 「相関関係」と「回帰分析」では,グラフとなる散布図に近似曲線を入れて,そのオプションのなかの「数式」や「R-2乗値(もしくはr値)」を表示させることがあります. 例えば以下のように. で,学生からこんな質問を受けることがあるのです. 「なんで『グラフに数式を表示する』にチェックを入れなきゃいけないんですか? てか, この数式は何を意味しているんですか? どうしてグラフに数式を入れなきゃいけないんですか?」 まったく同じ質問を私も学生の時にしたことがあります. 先生に怒られました.「お前はバカなのか?」って. 今になって思うと・・・,そうですね. これは, y=ax+b という基本中の基本の中学数学ですが, この数式が何を意味し,どのように活用できるのか解説されることは意外と少ない ものですから,数学に弱い文系学生なんかは,それを知らないまま放ったらかしの人って結構多いんですよ. それに,あらためて統計学の授業を受けていない学生にとっては,なかばルーティーンの如く表示させるこの「数式」の意味が分からないのは当たり前かと思います. 本来なら相関関係と回帰分析を丁寧に教えるべきところですが,なかなか伝えきれないまま終わることが多いものです. 上記のような課題ですと,「相関関係」に関する説明が主だったものになり(学生も解釈しやすいから),回帰分析の詳細な説明までいかないことがあります. そこで今回の記事はそれを補完するためにも, エクセルの散布図の「近似曲線の書式設定」のオプションにある「グラフに数式を表示する」の活用法 について取り上げます. 実はこの「数式」,チェックボックスをクリックするだけで簡単に算出されるわけですが,非常に利用価値の高いものなんです. 例題とした上記画像の数式をここに示します. y = -33.337x + 158.24 これは, 「y(ジャンプ力)は,x(疾走タイム)に-33.337をかけて,それに158.24を足した値である」 ということを意味します. ということは,「y」「x」のいずれかの値が分かれば,もう片方の値を推定すること

井戸端スポーツ会議 part 31『バレー,変じゃね? いや変だよ』

こんなニュースが出ています. ■ バレーの熱狂的応援、変じゃね? アイドルが踊り、DJが絶叫 ストレート負けでも「やばい超最高」 大盛り上がりで終わったバレーボール、リオ五輪世界最終予選。日本チームを応援してはいた。けれど、おそろいの赤いTシャツを着たアイドルやアナウンサーの熱狂的な姿がテレビに映るたびにモヤモヤしてしまった私。この感じ、何だろう。日本戦の直後、タイ女子チームのコーチはこう言ったそうだ。「これはスポーツではない。日本のショーだ」(withnews6月9日) 日本のバレーボールが気色悪い事態になっていることは以前から問題視されていました. 以前と言ってもそれはそれはかなり以前からで,私が学生だった15年くらい前(2000年頃)からです.ゼミでも話題にしていたし,食堂での学生同士の世間話のテーマにもなっていました. 「バレーを盛り上げるためには必要なところもあるのではないか」という意見もありましたが,当時のスポーツ系専攻学生の大方の見方としては, 「これはおかしい」「スポーツじゃない」「死ねばいいのに」 というものでした. ややエコノミックな思考をしたがる “意識高い系” 学生なんかは, 「これからのスポーツは,こうやってエンターテイメント性をもたせる必要があるんだよ」 とか言っていましたし,近鉄バファローズの身売り問題に端を発する「 プロ野球再編問題 」とも重なっていたので,ファンサービス重視とかスポーツビジネスの工夫といったことが取り沙汰されるようになった時でもあり,こうしたバレーボール界の取り組みを肯定的に捉えていた学生もいたことは確かです.ただ,それでも彼らは少数派でした. 私がテレビを見なくなったのは,ちょうどその頃からです.だからその後のテレビの中のバレーボールは知りません. 上記のニュースと関連記事を読んでみたのですが,当時よりも「気色悪い状況」はさらに加速しているようですね. これはプロ野球やJリーグが取り組むファンサービスやエンターテイメント性の強調とはわけが違います. 国際試合です.やっていいことと悪いことがあります. バランス感覚の欠如.不誠実なスポーツへの態度. ■ 東京を諦める でもお話したように,日本の社会がここに現れています. スポーツを見れば,その社会が分かるの

井戸端スポーツ会議 part 30「ドラゴンボールZ 復活のF」

昨年に公開された劇場版アニメ 『ドラゴンボールZ復活のF』 を,ひょんなことから昨日見ることができました. え? 見た感想ですか? エンターテイメントとしては「面白くなかった」ですよ. ドラゴンボールファンとしては,ちょっと物足りないところがあるかもしれません.少なくとも私はそう思いました. でも,これを「ドラゴンボールとして評価する」のであれば,私は非常に高評価します. その理由がかなり込み入ったものですので,以下にそれをご説明します. 以前, ■ 井戸端スポーツ会議 part6「スポーツとニーチェとドラゴンボール」 というのを書いたことがあります. 今回の話の前提となることを詳細に書いていますので,先にこちらを読んでもらったほうがいいかもしれません. そうは言ってもかなり端折ってまとめると, 劇中のキャラクター,なかでも孫悟空やベジータといった「サイヤ人」に投影されているのは,ただひたすら強くなりたいという人間の本質を描いたものであり,それはニーチェが唱えた超人思想と類似し,この思想は「スポーツ」を尊ぶ人間の精神から惹起されているのではないか?  というものでした. つまり,ドラゴンボールは「超人思想」を語るものであり,「アスリートの魂」を語っているのです. それに対し,ハリウッド版『ドラゴンボール』は上記の要素が皆無でした. だからあれは明確に「ドラゴンボールではない」 というのが以前の記事の趣旨です. さて,そういう観点からして今回の「復活のF」はどうだったか? というと,やっぱり鳥山明氏が脚本をしているため,本来のドラゴンボールでした. それは前作である2013年の『ドラゴンボールZ 神と神』も同様です. ドラゴンボールになければならない要素. それは「ただ純粋に「強さ」を求める過酷な “トレーニング”」です. アスリートと一緒です. それがなければドラゴンボールではありません. 以前の記事■ スポーツとニーチェとドラゴンボール を書いていた手前,昨年に「復活のF」が公開されるということで私なりに予想していた展開があります. 後出しジャンケンみたいで気分はよくありませんが, 「復活したフリーザは “トレーニング” をするはず」 というものです. そうでなければ鳥山明のドラゴンボール

この国難をなんとかするために大学教育

難儀な教育評論家が世間から叩かれていることに乗っかり,前回は「 キッチュ 」の話をしました. 現在の日本を覆う病原菌,それがキッチュです. キッチュについては,評論家の佐藤健志氏のブログで取り上げているのでそちらをどうぞ. ■ 同義大国とキッチュ大国 氏いわく,キッチュとは, 『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』 で述べたように 政治用語としてのキッチュは以下のように規定されます。 1)明らかに無理があるタテマエを、 2)〈みんなが共有している(はずだ)〉という点を根拠に「崇高にして達成可能な、美しい理想」のごとく絶対化し、 3)そのような姿勢を取るうえで都合の悪い一切の事柄を、汚物のごとく見なして排除したがる態度。 これは教育論に限らず,日本社会のあらゆるところに現れています. 左翼・革新勢力が陥っている精神態度であることはもちろんのこと,私がここ最近の記事で名指しするようになった「ウヨク」もキッチュに陥っているのです. 例えば左翼はこんなキッチュに陥っています. 「憲法9条があれば戦争を防げる」 という無理のある建前を, 「戦争反対こそが美しい理想だと誰しもが共有している」 と考え, 「憲法9条を守ることが戦争をしない道」 だと絶対化し, 「他国から攻めてこられたらどうするの?」 といった都合の悪い事柄を排除したがる. というもの. 逆にウヨクが陥っているキッチュとは, 「改憲・軍備強化すれば普通の国になれる」 という無理のある建前を, 「日本が普通の国になることが理想だと誰しもが共有している」 と考え, 「改憲・軍備強化によって世界的な地位が得られる」 と絶対化し, 「憲法9条を盾にすることで武力介入を回避してきた歴史」 という都合の悪い事柄を排除したがる. ということになります. ここで問題となるのは, 「誰しもがそれを理想だと共有していること」 と, 「都合の悪い事柄」 に対する考察が非常に弱いということです. 「戦争反対」は絶対的な美しい理想ではありません. 同様に,「普通の国になること」が理想なわけがない. ちょっと想像力を働かせれば分かることですが,いずれも両陣営から 「そんなわけねーだろ! これが理想じゃないとしたら,何が理想なんだ!」 と文