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【やったほうがいい】卒論・ゼミ論をまずまずの日数で書く方法 その2

前回の
【やったほうがいい】卒論・ゼミ論をまずまずの日数で書く方法 その1
の続きです.




【ゼミ論文・卒業論文の書き方―指導教員から怒られる数を減らすために】



第4章



文章のつづり方,ワンポイント集

同じ言い回しを続けない
通常,論文に限らず文章は同じ言い回しを続けることを避けます.どうしても続いてしまうこともありますが,極力同じ言い回しを繰り反さないようにしましょう.

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悪い例)
・・・・・・ということから,先行研究と異なる結果であった.この原因については,A群とB群で体重が異なっていたことで運動負荷が異なり,血中乳酸濃度も異なったからではないかと考えられる.
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ここまで「異なる」が続くと何が何だかわからなくなります.同じ言い回しを繰り返す文章を書く学生は結構多いものです.
以下に改善例を示します.

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改善例)
・・・・・・ということから,先行研究とは異なる結果であった.この原因については,A群とB群で体重に差がみられたことで運動負荷に違いが生じ,血中乳酸濃度に影響したからではないかと考えられる.
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同じ言い回しを避けるための言い回しを以下に集めてみました.参考にしてください.

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A) 異なった : 違った : 差があった : ~よりも高値 (低値)であった など

B) 同じであった : 同様であった : 類似していた : 同値であった など

C) 考えられる : 推察される : 思われる : 推測できる など

D) 示唆する : 示される : 可能性がある : 可能性が示される など
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カッコを多用しない
以下にカッコを多用した文を示してみました.

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このように,カッコ (カギカッコや曲線カッコなど) を多用 (具体的には1文に2つ以上) すると,文章 (緒言や考察において特に顕著) が途切れて (わざと途切れさせたい場合もあるが) 非常に読みにくく (どうしても入れなければならない場合もあるが) なります.
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また,カッコ内の文章が長過ぎる (例えば,このカッコ内文章の長さのように,元の文章の長さを超えて補足説明するようになった場合は,わざわざカッコをつけて書く必要もないわけで,カッコの外に出して文章を作った方がいいでしょう) ことも考えものです.



接続詞を多用しない
書いている本人自身,気づきにくいのが接続詞の多用です.
特に使う機会が多い,「また」,「しかし」は要注意です.
使う機会は比較的少ないですが,文章の流れ上,必要ない接続詞もあります.「一方で」,「このことから」,「さらに」,「ところが」といった接続詞が本当に必要かどうか,一度書いてみた後で推敲してみましょう.
接続詞をうまく使うと,文章に心地よい波を作る効果がありますが,あまりに多用すると大波を起こして船酔いします.

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以上の事から,男子は女子よりも気合がないことが明らかとなった.また,男子は根性がないことも示唆され,このことから腹の据わっていない性格が示された.さらに,女子は手加減ができない側面を持っていることも認められ,これらのことは性別に応じた対処の必要性が考えられる.
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上記の文をもう一度,太字下線部を外して読んでみてください.
それら接続詞がなくても意味が伝わるかと思います.
接続詞の頻度は好みの問題ですが,多用することは避けましょう.


間違った言い回し
論文を初めて書くであろう学生としては,これまであまり使ったことがない言い回しをするため,間違った言い回しが見られます.多いものを以下に示します.

まずは「示唆する」について

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悪い例)
知能測定の結果から,宇宙人は3歳児レベルであることが示唆した.
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なに言ってんのかわかりません.
でもこのように書く学生はけっこう多いのです.しっかりと推敲してください.以下のように改善しましょう.

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改善例)
知能測定の結果から,宇宙人は3歳児レベルであることが示唆された.
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もう一つのパターンを,

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悪い例)
知能測定の結果は,宇宙人が3歳児レベルであることを示唆された.
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「知能測定の結果」は天皇陛下ではありません.
これでは「“知能測定の結果” が,宇宙人は3歳児レベルであるぞよ.とおっしゃった」と言う意味になってしまいます.

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改善例)
知能測定の結果は,宇宙人が3歳児レベルであることを示唆している.
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「推察(考え)」について
※以下に悪い例を出していましたが,たまにこういう文章を書いてもいいかなって思うこともありまして...,あくまでご参考までに.

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悪い例)
知能測定の結果から,カバはバカであると推察した (考えた)
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へー,そうなの.よかったね.ってことになります.
これは言い回しが主体的過ぎるのです.
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改善例)
知能測定の結果から,カバはバカであることが推察される (考えられる)
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第5章



文献の引用 
論文は必ず先行研究や関係のある論文,書籍以降,これらを合わせて「文献」とします)を参考にして,そこから意見や考えを引用することになります.

一般的な引用方法は,著者名の後に,その引用文献の発表年をカッコ内に示し,引用文章は引用符で囲みます.
著者名は,一人の著者の文献を引用する場合は著者名だけ示しますが,共著者がいる場合は,筆頭著者のみを示し,その末尾に日本語文献であれば【~ら】や【~たち】とし,英語文献であれば【~et al.】とします.

引用した文章の末尾には,文献リストの作り方で紹介する文献リストとリンクしている文献番号をつけます.
文献番号の示し方は,カッコに文献番号を入れるだけの方法と,上付き数字で示す方法などがあります.
視認性の高さからも上付き数字がお勧めです.
例えば,

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A) Newton (1687) は,「・・・・・・」であるとしている12)

B) 鈴木ら (2007) は,これらの問題について「・・・・・・」だと報告している(5)
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というようにします.


具体例を出してみましょう.
まず,文をそのまま引用する方法.引用符を使い,その著者の文章をそのまま載せる方法です.

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A) これについては,ルクス・グッドマン (2007) が「顔が良ければ人生はバラ色であり,そうでない者は生きる資格がない」と報告している1)

B) クゥマ=トーリら (1985) は,「貧乏な町が活性化するには,野蛮な大学を受け入れるなど,少しの痛みは伴うべきである」と述べている (4)
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この場合,注意しなければいけないのは,“著者の文章をそのまま使う” ということです.原則的に,ひらがなを漢字に変えたり,アルファベットをカタカナに変えたりすることもできません.
もし引用したい原文に,明らかな誤植や間違いがある場合はというと,以下のようにしておくとよいでしょう.

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斉藤ら (2004) は,「形態電話の使用頻度と頭の悪さには相関がある (原文ママ)」と論じた
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次に,文章をそのまま引用するのではなく,意見,概要を引用する方法です.引用したい文章が長い場合や,論文・書籍全体が示す結果や意見を引用したい場合に用います.

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A) Descartes (1637) は,人が唯一絶対的に証明できることは自分自身の存在だけであることを述べている40)

B) このようなことから,Smith et al. (1998) は,ツバメが低く飛ぶことで,近いうちに雨が降ることを統計学的に証明した(32)
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著者名と発表年数の示す方法.著者を紹介して細かく論じない場合です.

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A) その一方で,握力と体重には有意な相関がないとする研究もあり (佐藤2009) ,今後の調査が必要である.

B) このような発育発達に伴う心的影響についての研究は数多くなされているが (綾小路ら,2005 Smith et al., 2009),その結果は一致したものが少ない.
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著者名と発表年数を示さない方法.わざわざ取り上げて説明するほどのことではない場合や,文献の数が多い場合に用います.

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A) その一方で,握力と体重には有意な相関がないとする研究もあり20),今後の調査が必要である.

B) このような発育発達に伴う心的影響についての研究は数多くなされているが7) 12) 13) 16),その結果は一致したものが少ない.
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翻訳書である場合はどうなのか
外国語の文献を訳したものを引用する場合,さまざまな方法がとられていますが,以下の方法が無難であると考えられます.
原著者 (元々その本を出した人) の名前を使い,その著者名やタイトルの表記については訳者の表記に従うというものです.

どういうことかと言うと,例えば,

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「 著者; Mullhall, Douglas: タイトル; Our molecular future 発表年; 2002
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という本があり,これを訳した訳書として

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「 訳;長尾力: 著者;ダグラス・マルホール: タイトル; ナノテクノロジー・ルネッサンス: 発表年; 2003
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という本があります.

この場合には,著者はマルホール,もしくはMulhallです.
長尾ではありません.
タイトルはナノテクノロジー・ルネッサンスを使います.
発表年はというと,訳書が出版された年を書きます.


引用方法は,

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マルホール (2003) は,科学が分子レベルで操作が可能になる将来を見越した上で,その希望と危険性について実際の研究現場の視点を交えながら述べた8)
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著者を元々のスペル,または英語 (上記ではMullhall) にしなければならないと考える人もいます.これについて原則はないと思われますので,好みの方法で示してください.



文献リストの作り方
文献リストは,‘参考文献’ や ‘引用文献’ , ‘文献’ などと題して列記します.
文献リストに示す順序は本文中のアルファベット順 (または引用順) に整理して,本文中の番号と照合します.
多くの場合,文献リストの著者名は【~ ら】,【~ たち】,【~ et a1.】と省略せず,全著者名を列記します.人名の記載順は姓を先にして名を後にします.

※ちなみに,マイクロソフトWordには「文献リスト」をつくる機能がついてたりします.
便利なんだかどうか微妙なところですが,それを使用するのも一つです.ググったらいろいろと出てきますよ.


論文雑誌の場合
番号,著者名,論文表題,掲載雑誌名 (省略表記がわかれば,それを用いてよい),西暦年数(カッコに入れる),巻数,号数(ない場合は省略.号数はカッコに入れる),ページ数(始頁一終頁)の順に記します.


 和文雑誌の例
島本英樹,田中喜代次,安達幸生,減量プログラムの成果にみられる季節差,体力科学, (1998)47 509-516


 欧文雑誌の例
Shimamoto, H., Tanaka, K. and Adachi, Y. Seasonal variation may have an effect on body composition alteration induced by exercise training. Jpn. J. Phys. Fitness Sports Med. (1998), 47 , 509-516



単行本の場合
番号,著者または編者名,書名,版数,章名,発行所,発行所の所在地,(西暦年数),引用ページ数(本全体の内容を引用した場合は不要)の順に記します.


和文単行本の例
名取礼二.現代スポーツ生理学,初版,運動に関する身体各部の働き,日本体育社,東京, (1918), 10−13


欧文単行本の例
Fulton, J. FMuscular contraction and the reflex control of movement2 ndEd., The Williams & Wilkins CompanyBaltimore, (1926).

Seher, AMElectrical correlates of the cardiac cycle In., Ruch, T. C. & Patton. H. D., Physiology and Biophysics19 th Ed., Chap. 30, Saunders. Philadelphia, (1965), 365−599.


※上記の方法は雑誌「体力科学」の文献リストの作成法を転載したものです.
この方法以外にも,さまざまなリストの作成方法があります.

リストする際の順番は筆頭著者のアルファベット順(日本語と欧文が混ざっていても,アルファベット順にならう),もしくは本文中で引用した順であることが多いです.



目次
卒業論文には目次をつけることが多いです.以下のようにします.

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        目次

        緒言・・・・・・1

        方法・・・・・・3

        結果・・・・・・6

        考察・・・・・・10

        結論・・・・・・13

        謝辞・・・・・・14

        参考文献・・・・15

        図表・・・・・・17
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上記以外のデザインでも構いません.これは一例です.
※というか,ここらへんは完全に大学や研究室・指導教員によると思われます.


以上,
とりあえず,ブログ中に掲載できるものをコピーしてみました.
もう少し詰めて書こうかと思うところもありますが,冊子が長く,ページ数が増えてしまうと,そもそも読んでくれなくなっちゃうというジレンマもありますので.
それに,細かいところは直接指導したほうが速いですし.
ここ何年かはこれを4年生に配布しておったという次第です.