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注目の投稿

どうしても教職課程の改善をしたいなら

前回の投稿中に以下の内容を盛り込むと長文になり過ぎると思いましたので,こちらに分けて書かせてもらいます. 教職課程や教員養成の改善についてのお話です. 「課程」や「研修」を充実させることが重視される流れに,「それだと学校や大学の負担が増えるだけで,効果は低い」ということを前回の記事で取り上げました. 事前に, ■ ようするに,余裕のない現場が大学に求めている を読んどいてもらうと分かりやすいかと思います. ザッとおさらいしておくと, 教育や教育改革の話題は,焦点がボヤけたまま議論されるので右往左往してしまいがちでして. 「教員の質が下がっている」とか,「養成や研修を充実させる」といった政策の話をするのであれば,教員に求められる能力と責任,そして権利・権力を明確にしなければなりません. 端的に言うと,今の学校の教員は,求められるものや責任が増えて複雑になっているのに,権利・権力が削がれてしまっているのです.それも尋常じゃないほどに. それなのに,(教育職という)反論できない構造である教員サイドに甘えて,「求められる能力」とやらがドンドン積み上げられている.それが現状です. 何度か記事にしましたが,例えば「いじめ問題」にしても,誤解を恐れずに言えば, 「教員が関与できないシステムを大衆が望んで作り上げた」 にもかかわらず,いざ刺激的な事件が連続して報じられると 「教員が関与しなかったのは何故か?」 という議論がしゃーしゃーとまかり通ることです. 本当ならマスメディアがこうした議論に対し, 「しかし,生徒の間に教員が入っていくことを拒む教育環境や学校文化を,長年にわたってジワジワと作ってきたのは我々だとも言える」 と報じればよいものを,そうしないものだから大衆が求める嗜好に合わせて「悪者は誰か?」という不毛なドンチャン騒ぎに終始します. そうは言っても,マスメディアという言葉の意味を辿れば,mass(大衆)のmedium(媒体)なのですから,マスメディアは大衆・世論が求めるものを広めるものとしての機能を“残念ながら”果たしてしまっているとも言えるわけで. この話はこの話で長くなるので, ■ 大津いじめ問題で大衆の愚かさに絶望しています ■ 喫煙ルーム(黄柳野高校のこと) を読んでもらうとして,本来のテーマに戻りま

ようするに,余裕のない現場が大学に求めている

昨日,隣の研究室の先生からこんな話題を提供してもらいました. 「教員養成、6年じっくり 愛知教育大、修士まで一貫コース」 教員の質の向上をめざし、国立愛知教育大(愛知県刈谷市)が、全国唯一となる大学院修士課程までの「6年一貫コース(6一コース)」を開設している。大学院での研究と並行して、学校での長期間の授業実践を盛り込んでいるのが特徴だ。意欲の高い学生が集まるが、研究成果を教育にどう生かすかを模索している。 朝日新聞 2013年5月24日 私のところも教員養成をしているので,関係がない話題ではありません. 教育関係者や教育系大学の方々にとっては常識ですが,このニュースの背景には「教員の修士レベル化」というものがあります.教員のレベルを上げるために,免許取得条件に「修士以上の学位を有する」っていうのを必須にしてしまおう,というものです. そういう潮流を見越して,またはこの理念に賛同して,大学4年間と修士課程2年間,計6年間かけて教員養成をする大学が出てくるのではないか,と思っていたら,早速そういう大学を見つけました.というニュースなのです. 隣の先生にもお話しましたが,この手の話に疎い人のために簡単に解説しておくと, 昨今,教育現場での事件・事故がクローズアップされることから,より質の高い教員が求められておりまして. そんなわけで,教員の質を高めるにはどのような策が必要か? そして,教員養成をどのようにすれば効果的か? が議論されているのです. さしあたって教員養成改革のメインストリームとしては, (1)教職課程の修士レベル化 ←上記の流れ (2)教職課程の質的向上 (3)研修の充実 (4)インターン期間の導入 ←第二次安倍内閣で浮上 (5)免許更新制 ←第一次安倍内閣から開始 といったところです. 上記のことについては,2006年の中央教育審議会(いわゆる中教審です)での議論が, ■ 今後の教員養成・免許制度の在り方について(答申) として文部科学省のHPに掲載されていますので,詳細が気になる人は参考にしてみてください. なお,くだりの「教職課程の修士レベル化」は民主党が進めていたものです.当時(2012年8月)の資料として以下のものがあります. ■ 教職生活の全体を通した教員の資質能力の総合的な向上

補足:エクセルの散布図にラベルを表示させる方法

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  前回の記事の補足です. 前回,標準得点を利用したテスト結果や測定データのフィードバック方法を紹介しましたが, ■ 標準得点と散布図を用いた分析と評価方法 ここで以下のようなグラフ(散布図)を, 以下のように,プロットされた点のところにラベル(名前とか)を貼り付ける操作をしたものを示しました. 上記以外にも,かなり以前の記事 ■ 続・農業のこと で,以下のような図もお示ししたことがあります. こういう,散布図の「データポイント」に「ラベル」という文字を表示させているものを見る機会は多いのですが,いざ同じように作ろうとすると,初心者には難解な作業だったりします. 仕方なく,散布図上に「テキストボックス」で書き込んだりしてるのではないでしょうか. “よく見る” わりに,実は難しい. ということで,今回の記事ではこのグラフの作成方法に触れておきたいと思います. 他のサイトでも紹介されているのですが,これも縁だと思って見ていってください. 私がWindows版(Excel 2007)でもMac版(Excel 2011)でも同じ結果になることを確認している方法をご説明します. それ以前や以降のバージョンでも,なんとかなるんじゃないでしょうか. まず,散布図を作りたいデータが入ったエクセルのシートを準備してください. 例として,前回と同じエクセルデータを用意してみました.こんな感じです. このデータで作成した散布図に,Aさん〜Kさんの名前,つまりラベルを貼り付けよう,というものです. では,上記の用意ができたら以下のマイクロソフトのサポートページに行ってください. http://support.microsoft.com/kb/213750/ja こういう画面が出てくるかと思います(2013年5月22日現在). ここに書かれていることを読んでもらえればOKなのですが,もう少し詳細に,“とりあえず作成するため” の最短コースを以下にお示しします. ずずぃーっと,このページの下の方にスクロールしてもらいますと,こんな表示の部分が出てきます. そしたら,この灰色背景部分の「コード」を,以下のように “選択” して “コピー” してください. ※お示ししている図はMacのS

標準得点と散布図を用いた分析と評価方法

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今月の記事として, ■ 点数・得点を段階評価するためのエクセルシートの作成 ■ 標準偏差を用いた段階評価の仕組み ■ 四分位とパーセンタイルでの段階評価をエクセルで作成 を紹介しました. どちらもテストや測定結果を対象者(クライアントやチーム)に返却(フィードバック)する際に威力を発揮するエクセルの分析・評価方法です. 今回も平均値と標準偏差を使ったフィードバック方法として利用できるものをご紹介します. 「標準得点」を使った評価です. 後半で紹介する「散布図」との併用で,解釈が楽な上に視覚にも訴えることができる優れものです.参考にしてみてください. では, 例として使うデータは以下のものです. 早速,このAさん〜Kさんのデータを標準得点化します. 標準得点(z得点という)の算出式ですが, 標準得点(z) = (測定値 − 平均値)÷ 標準偏差 で計算します.  エクセルの例では以下のように入力します. まずは垂直跳びの標準得点化のために,D列2行目に =(B2-$B$13)/$B$14 を入力します. その調子で,脚筋力の標準得点化, E列2行目には =(B2-$B$13)/$B$14 そんな感じで,この2つをオートフィルします. これでAさん〜Kさんの垂直跳びと脚筋力のデータの標準得点を算出することができました. 以下の図では,桁数を小数点第一位に調整しています ところで,この標準得点ですが,平均値と標準偏差を基にして,そのデータが平均値からどれだけの標準偏差のぶんだけ離れているかを算出したものです. そんなわけで,この標準得点の平均値と標準偏差を算出してみると,  上図のように,平均値は0,標準偏差は1になるという性質を持っています. どうってこと無いように思うかもしれませんが,この標準得点は非常に便利な数値なのです. 代表的な利用例をを以下に紹介します. それが冒頭でも述べた「散布図」によるものです. では,算出した標準得点で散布図を作成しましょう.  このようにして,  散布図を作成しました.  これを,きれいに正方形にしたのが以下のものです. うるさく見える線も消して,スッキリさせています.  察しの良い方は気づかれたかも