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質的研究


過日の修士論文発表会で,「質的研究」に挑戦した学生がいました.
質的研究というのは一般的に行われている数値データに基づく分析を行う「量的研究」の手法ではなく,文章や記号を分析する研究手法です.

これをいい機会にと,1年くらい前に買ったっきり全く目を通していなかった戈木クレイグヒル滋子 著『質的研究方法ゼミナール』のページを開きました.
まぁ.実際にやってみないとわかりませんね,こりゃ.未知の領域です.

数的データでは扱えないような対象(少数のインタビュー,アンケート調査)などを分析したい場合には役に立つ分析手段だとは思います.

例えば,トップアスリートが取り組んでいる練習方法と,その練習で気をつけている留意点や意識している点に関する分析.また,希少な体験をしている人の分析といったものは数値に置き換えることができないし,置き換えたとしても平均値化,代表値化,グラフへのプロットができないという欠点があります.

これらについて,質的研究ではグラウンデッドセオリーアプローチといった分析方法を使って,質的データを分析していきます.
上に挙げた戈木氏の著書ではこのグラウンデッドセオリーアプローチを紹介しています.
グラウンデッドセオリーアプローチというのは,質的研究ではポピュラーの分析方法のようで,得られたデータのかたちをできるだけ変えないように解釈を進める方法だそうです.

川喜田二郎 著『発想法』で世間に紹介された “KJ法” による分析が多用されています.
KJ法というのは,新しいアイデアを生むためのミーティングなどで利用される「ブレインストーミング」での意見の整理方法のことです.
出た意見をメモしてまとめ,それぞれをカテゴライズしてラベリングするという手順を踏みます.
グラウンデッドセオリーアプローチでは,このKJ法と同様の整理・分析手段が用いられているようです.

上記の用語で意味不明な部分がありましたら,ググってください.

分析方法が完成されている量的データの研究とは違い,質的研究の分析はまだまだ発展途上の印象.
分析する人が違えば結果も変わりやすいという特徴(欠点)もありますし,難しい研究方法であることには違いありません.

ただ,看護や介護,福祉といった分野では非常に注目されている研究方法のようで,より人間の実感に近い考察ができるというメリットもあるようです.
数的データによる研究は実感とズレるという特徴がありますからね.
これはスポーツや体育といった分野にも同じことが言えるのではないでしょうか.

今後はその分野に足をつっこむことになりますから,私としても注目の研究方法です.