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ネットで拾った名文 part 2


前回は,“ネットならでは” という文ではなかったので,今回はネットならではの文を紹介します.

最近はTVを観ることがなくなり,もっぱら youtubeニコニコ動画を観ています.そこにアップされているものにも,違法ではありますがTV発のものもありますので,間接的にはTVを観ていることにはなるのでしょうか.

それでも,普段だったら絶対目にすることがないようなコンテンツを見る機会としては非常に秀逸なメディアですので,いつも楽しませてもらっています.

今回はそうしたなかでも,例のごとく「!!」と感じさせてくれた,しかもネットならではのコンテンツから紹介しましょう.

ニコニコ動画にアップされているコンテンツの中には,TVゲームの映像をただ垂れ流しているものがあります.これが意外と面白くて,RPGとかをプレーしなくてもシナリオを楽しめるという寸法です.下手なドラマよか,よっぽど楽しめます.

その中に,『タクティクスオウガ』という中世ヨーロッパ風の世界を舞台としたファンタジー系ゲームのプレー動画があります.
で,この作品の中には,サブカルチャーであるTVゲームの内容とは思えないようなキャラクター同士の会話があり,思わず見入ってしまいました.

いわゆる 「聖騎士」 と 「暗黒騎士」 が対峙しての会話シーンなのですが・・・,まあ,以下に一部省略していますが記述しましたので読んでみてください.とても子ども向けTVゲームとは思えません.

あらかじめ背景を説明しておくと,悪の帝国っぽい国に所属する暗黒騎士が,とある国を制圧しようとやってきました.その “とある国” を,わけありで助太刀しているイイ人っぽい聖騎士がいます.両者は対峙し,そして暗黒騎士はこの国を制圧しにきた理由を話します.

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聖: 力で人を縛り付ける,そうしたお前たちのやり方に問題がある,そうは思わないのか?

暗: 縛り付けた覚えなどないな.彼らは力で支配されることを望んだのだ.世の中を見渡してみろ.どれだけの人間が自分だけの判断で物事を成し遂げるというのだ.自らの手を汚し,リスクを背負い,そして自分の足だけで歩いていく... そんなヤツがどれだけこの世の中にいるというのだ? ・・・貴公らの革命を思い出してみよ. 貴公らが血を流し,命を賭けて守った民はどうだ? 自分の身を安全な場所に置きながら勝手なことばかり言っていたのではないのか?

聖: 彼らは自分の生活を維持するだけで精一杯だったのだ….

暗: いや,違う.被害者でいる方が楽なのだ.弱者だから不平を言うのではない. 不平をこぼしたいからこそ, 弱者の立場に身を置くのだ. 彼らは望んで『弱者』になるのだよ.

聖: ばかな….人には自分の人生を決定する権利がある. 自由があるのだ.

暗: 本当の自由とは誰かに与えてもらうものではない. 自分で勝ち取るものだ.しかし,民は自分以外の誰かにそれを求める. 自分では何もしないくせに権利だけは主張する. 救世主の登場を今か今かと待っているくせに, 自分がその救世主になろうとはしない.

聖: 人はそこまで怠惰な動物ではない. ただ,我々ほど強くないだけだ.

暗: 聖騎士よ,貴公は純粋すぎる. 民に自分の夢を求めてはならない. 支配者は与えるだけでよい.

聖: 何を与えるというのだ?

暗: 「支配されるという特権」をだ.人は生まれながらにして深い業を背負った生き物だ. 幸せという快楽のために他人を平気で犠牲にする….より楽な生活を望み,そのためなら人を殺すことだっていとわない. しかし,そうした者でも罪悪感を感じることはできる.彼らは思う…, これは自分のせいじゃない. 世の中のせいだ,と. ならば,我々が乱れた世を正そうではないか. 秩序ある世界にしてやろう. 快楽を貪ることしかできぬ愚民にはふさわしい役目を与えてやろう. 全ては我々が管理するのだ.

聖: 意にそぐわぬ者を虐げることが管理なのか!

暗: 虐げているのではない. 我々は病に冒されたこの世界から その病因を取り除こうとしているにすぎん.他組織に影響を及ぼす前に悪質なガン細胞は排除されねばならんのだ!

聖: 身体に自浄作用が備わっているように 心にもそれを正そうという働きはある!

暗: それを待つというのか? 貴公は人という動物を信用し過ぎている. 民はより力のある方へ,より安全な方へ身を寄せるものだ.
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どうでしょう?皆さんの感想は?
かなり政治色が入った,子どもには理解しがたい会話ですよね.

この暗黒騎士さんが訴えたいこと,分からなくもないです.
“暗黒” というわりに,おっしゃってることはスゴく熱がこもっていて理想主義者ではないかと思うんです.
ていうか,朝日新聞の社説とかTBSの日曜の朝の番組とかが主張しているイデオロギーと本質的には似通ってませんか?

この暗黒騎士さん,きっと居酒屋あたりに連れて行って腹を割って話したら熱血漢でイイやつなんでしょうね.
でもちょっと突っ走るきらいがあって,熱すぎるところがウザがられそうです.
こういう教師,いますよね.つーか,教師にこういうタイプ多そう.


この暗黒騎士さんが訴えたいこと,それはつまり共産主義,社会主義の本性なんです.
別に私,アンチ共産・社会主義というわけではありません.シンパシーを感じる部分,理解できる部分もあります.

民衆は基本的に平和を望んでいる.管理してあげれば,役割を与えてあげれば,それぞれの道でコミュニティを形成し秩序を保ってうまくいく.という,一見理想的な主張です.

聞こえはいいけど,実際は暗黒騎士さんがところどころ熱く語ったところに本性が垣間見えます.
要は,共産主義によって管理者が秩序を与え,形成するのはいいんだけど,それに反発する人がいた時にどーにもこーにもならなくなるってところ.
“安定した世界を与えれば,人類は平和に暮らせる”
...,とってもいーことなんだけど,現実的ではありません.

皆が皆,その管理者が理想とする理想を理想とは思わないわけですから,どうしても軋轢が生じます.
そうなった時,管理者はどうするか?それは歴史が物語っています.
ソビエト連邦しかり,中国共産党しかり,北朝鮮しかり...

やはり,「生物」 だけでなく 「社会」 においても動的な平衡を保つことが重要な要素だと思われます.(※ 生物の動的平衡については以前の記事を参考に)
私としては,“今現在の世界では” 共産・社会主義は適合できないと考えています.残念ながら.

パラドックスのようですが, つまりは「理想的な社会」 を目指しつつも,完璧ではない不安定な世界を形成すること,それこそが最も安定した世界だと思うんですよね.

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