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数学的思考力?

久しぶりの名著です.
細野真宏 著『数学嫌いでも数学的思考力が飛躍的に身につく本』

著者は『経済のニュースがよくわかる本/日本経済編・世界経済編』(この本もタイトル通り非常にわかりやすい)というミリオンセラーを書いた人でもあり,数学専門の予備校を経営するほどの数学指導のエキスパートです.

そんな氏が満を持して出版したとも言える「数学教育」の書.今日手に入ったのですが,読み始めたら止まらない.全部読んでしまいました.

「数学」を扱っているのですが,数式が全く出てこない.これは出さないように意識して書かれていますね.多分.それだけ “数学”っぽくない内容に感じます.
私自身,数学が全くダメなのですが,そんな私がスラスラ読めて,著者の前書き/宣言通りに読後は数学に対する意識が変わり,数学アレルギーがなくなっているような気がします.

“数学” と “計算” は違うと言ったところでしょうか.計算できなくても数学的思考があれば/身につけば,数学を学んだ価値はある.むしろ,数学はそのように学ばなければならない,というのが著者の主張.
そんなステレオタイプの主張は他の誰かもしてそうですが,著者はさらにそれを身近な生活や社会的出来事を取り上げて具体的,かつ論理的に示します.

例えば社会現象,経済ニュースや世論調査.どれだけマスコミが適当な報道をしているのかを,クイズ形式で数学的思考によって解説します.記者やキャスターのいい加減なデータ解釈やコメントに対し,数学的思考があればそれがウソ・デタラメであることがわかるとし,それら情報のバイアス(先入観,偏り)を抜けだし情報の本質を見ぬくことが重要だと説きます.

特に感心した例題が, “デフレがなぜ悪いのか” ということについて.さすが経済の専門家です.デフレがなぜ悪いのか,その本質は “企業の借金が増えること” が正解.物価が上がることでも給料が下がることでもないそうです.なぜなら,給料が減っても物価が下がっているのですから,こういうデフレという現象自体それだけでは悪いことにはなりません.
物価が下がることによって縦断的・絶対的な売り上げが低下し,これによって企業の借金返済が滞ることで不況へとつながる.
こういうことが分かっていれば,政治・経済ニュースの視点が変わります.どこにどのような政策を打つことがいいのかを判断することができます.


数学嫌いが和らいだところで,自分の専門を鑑みると,そう言えば体育科に関する書籍って少ないですよね.体育の授業方法に関するものもいくつか購入しましたがイマイチ...

これは,保健体育科に対する教育業界や世間の関心の度合いを表しているのかもしれません...というバイアスを取り払って考えなきゃいけませんね.