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Remember Pearl Harbor


私が少年時代を過ごしたところではアニメをほとんど放送しておらず,『ドラえもん』をはじめとする藤子・F・不二雄の作品の記憶しかありません.
だから当時,世間をにぎわせていたエヴァンゲリオンとかガンダムなどについては見たこともありません.今住んでいる関西では信じられないようなことですが.
この歳になって 「あの有名だった作品はどんなのだろう?」 と思い出し,子どもの頃の憧れだった作品を見てみたいと思うようになってきました.

幸い,今はYoutubeやニコニコ動画で(著作権違反の)アニメ本編が流れていることもあり,労せず見れるのがラッキーで,今日も朝から富野由悠季 原作,今西隆志 監督『機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光』を見ました.

(以降,作品のネタバレあり)
子どもの頃にこの作品を見たら何とも思わなかったでしょうが,今になっていろいろな情報をあらかじめ知っておくと,アニメとは言えその奥深さに驚き感心します.

まずこの作品を至極簡単に説明すると,世界を牛耳っている「地球連邦」に,先の大戦で敗北した「ジオン公国」の残存兵が決起するというもの.ジオンは連邦の秘密兵器「ガンダム」を奪取し,短期決戦・ゲリラ戦を仕掛けます.再び敗戦することは確実なはずなのに,ジオン軍は亡国への想いを胸に,先の大戦で散った戦友のために戦います.

はっきり言ってこの作品,旧日本軍へのオマージュ,そして戦後日本の “右” の人達の想いが詰まったものではないですか!!

何よりそれを象徴しているのが,ジオンが奪取したガンダムで連邦の観艦式を襲うシーン.陽動・隠密行動しながら忍び寄るジオンの作戦は,あまりにも旧日本軍の真珠湾奇襲に酷似.一方,攻撃を察知しながら暢気に観艦式を決行する連邦はまさに「アメリカ」そのもの.ハワイの真珠湾基地でも多数の艦船がたむろしている同じ状況でした.

攻撃に向かう際,ジオン兵のガトー少佐が呟くセリフ,
「待ちに待った時が来たのだ.多くの英霊が無駄死にでなかったことの証のために…!」

ガトーという名前は,第二次大戦で多くの日本兵が命を散らした「ガ島(ガダルカナル島)」からとったもの?そしてそのガダルカナル島が浮くのは太平洋のソロモン海域です.
そう,この作品でガトー少佐が奇襲を仕掛けた場所もソロモン宙域と呼ばれていました.そしてあのセリフ...,偶然とは思えません.

まだまだあります.
ガトーが攻撃に際して放ったのは,“連邦”から”奪取”したガンダムによる“核弾頭”.これもヒロシマ・ナガサキに対するアメリカの原子爆弾投下へのメッセージ性が伺えます.
ジオンの将兵の口からでるセリフは「侍」を意識したような言い回しだし,連邦の思想も当時のアメリカを意識した構成になっています.

敗戦が確実になった時のガトーの言動も,
「一人でも多く突破しアクシズ艦隊へたどり着くのだ.我々の真実の戦いを後の世に伝えるために!」

アクシズ艦隊というのはジオンの友軍のことですが,これは第二次大戦中の,枢軸国(Axis) = 日本・ドイツ・イタリアのことですから,これも偶然ではないでしょう.

そして最後は,生き残れないと判断した兵から,一人また一人と,ガトーも連邦の艦隊へと「特攻」していきます.これについては言わずもがな.

「我々の真実の戦いを...」というガトーの言葉は,旧日本兵の言葉を代弁させたものでしょう.作者の意図がここに終結といった観.
視聴者としては連邦軍からの視点で物語を追うのですが,ジオン軍の戦いにかける想いに心打たれます.
敵ながら天晴れ,と.そして,同じような物語(歴史)があなたの国にもあるのだと.

チョッと前に田母神論文が話題になっていましたが,おおよそ訴えたい内容は同じようなこと.アニメか論文かの違いです.1991年の作品ですか・・・,あの時代にこのようなメッセージを発するのはアニメで,しかもこのようなマスクをかけないと無理でしょうからね.やるな作者!!